芥川龍之介「歯車」殺人事件 の商品レビュー

斎藤栄(著者)

2016/05/02

芥川龍之介の「歯車」に見出した暗号を応用して
ダイイングメッセージが残されている
けれどもそれは、被害者が襲われる以前よりそこにあるものだった
量産小説のなかでも奇をてらった部類に入る本作だが
ミステリーの構造としては完全に破綻したもので
歯車がかみ合ってないんだよね
しかしまあ「後期クイーン的問題」を念頭に吟味するのも一興だろう
被害者＝黒幕などというアクロバットすら
やらかしかねないのが人間だ
たとえばただ、探偵にかまってもらいたいというだけで
それをおこなうことも考えられるわけだ
なぜそう思うかといえば
作中作「歯車殺人事件」の冒頭においてはなぜか
百合をにおわせるような描写があるのです
探偵・タロット日美子は完全黙殺を決め込んでいるようだがね…