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日本幻想文学集成(26) の商品レビュー

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2016/10/15

円地文子さん(1905.10.2~1986.11.4 享年81)の幻想文学集成(1994.6)の中に「冬の旅」があります。幽霊になった三島由紀夫と会話しながら、あの事件への思いを綴っていらっしゃいます。「私には、彼の武士道も、日本精神も、陽明学もいっこうに解らない。解っているのは...

円地文子さん(1905.10.2~1986.11.4 享年81)の幻想文学集成(1994.6)の中に「冬の旅」があります。幽霊になった三島由紀夫と会話しながら、あの事件への思いを綴っていらっしゃいます。「私には、彼の武士道も、日本精神も、陽明学もいっこうに解らない。解っているのは彼が楽屋を持たない役者だったということだけである。人生のあらゆる場面が役者であり、而もその何処でも派手な立役者でなければならなかった。」この作品は、円地文子の三島由紀夫への「弔辞」だと思いました。

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2009/10/04

 この小説の入っていた新潮文庫のタイトルを忘れたが、この小説は唯一読んだ円地文子の小説である。女流作家というのをあまり好まない私が、思わず引き込まれてしまうのは、一人の痴呆の老婆の中に潜む老いの中の性と少女のような無邪気さが、彼女が遺した猫のスケッチという形で描かれるその手法の鮮...

 この小説の入っていた新潮文庫のタイトルを忘れたが、この小説は唯一読んだ円地文子の小説である。女流作家というのをあまり好まない私が、思わず引き込まれてしまうのは、一人の痴呆の老婆の中に潜む老いの中の性と少女のような無邪気さが、彼女が遺した猫のスケッチという形で描かれるその手法の鮮やかさにある。老婆の中の性の生々しさなど、女性しか書けないが、そればかりでは美しくない。猫の戯画があることで、「私」がそれを描き縊死した老婆の魂に踏み込んでいける、そしてただの性を描くようないやらしさは画帳の上に清真なものとなる。  稀有な小説である。

Posted byブクログ