ニードフル・シングス(下) の商品レビュー
20年前は大好きだったキャッスルロックの物語が、今は読むのに疲れる。過剰な描写やカッコ書きや製品名が鼻につくようになってしまったのは年とったからだろうか・・・ 昔は二晩で一気に読んでたけど、再読には上下合わせて3カ月かかった。
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あんなささいな「対価」がこんなことに。 群像劇の極めつけですね。 痛てー!関係とかグロー!関係のシーンがわりと多めなので読むときは体調を整えてからにしましょう。 それにつけてもパングボーン保安官はかっこいい。
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キャッスルロックに開店した骨董屋「ニードフルシングス」〈必需品〉。店主はリーランド・ゴーントと名乗る背の高い不気味な男。彼は、店を訪れる客に「欲しくて欲しくて仕方がないもの」を格安の値段で売ってくれる。「ちょっとしたいたずら」を仕掛けることを引き換えに。 キングの小説を読んでい...
キャッスルロックに開店した骨董屋「ニードフルシングス」〈必需品〉。店主はリーランド・ゴーントと名乗る背の高い不気味な男。彼は、店を訪れる客に「欲しくて欲しくて仕方がないもの」を格安の値段で売ってくれる。「ちょっとしたいたずら」を仕掛けることを引き換えに。 キングの小説を読んでいていつも思うことは、アメリカという国はキリスト教の宗教国家で、キング自身もキリスト教という枠組みの中でホラーを書いているということだ。そして、キング自身はあんがいまじめなキリスト教徒なのではないかと思う。(カトリックかプロテスタントか。その他かどうなのかは知らないけれど)。キリスト教という宗教的枠組み、精神的バックボーンのあるアメリカ人と、そういったものを持たない日本人とでは、キング小説の味わい方にも若干の差があるのではないか(若干どころではないかもしれないが)と、私は常々感じているのだが、検証のしようがないので、ここではあまり突っ込まないことにする。 だが、今回の「ニードフルシングス」は、間違いなくキリスト教の枠組みの中に組み込まれた世界観の物語である。なぜなら、骨董屋店主ゴーントと客の「取り引き」から成り立っているからである。取り引き、すなわち契約は、キリスト教(ユダヤ教も含んで)の根幹を成す概念のひとつである。客は店主との一見なんでもない取り引きにがんじがらめになって破滅していく。それは言うまでもなく悪魔との取り引きに他ならない。悪魔は人間のちょっとした欲望につけ入る隙を虎視眈々と狙っているのだが、それに打ち勝つ力の源は、月並みながら「愛」とか「信頼」だったりするのだ。 それが陳腐だといってしまえばそれまでかもしれないが、そこがまた「キングって見かけによらず人間が好きなんだよね」と思わせてくれるところでもある。キリスト教の枠組みを、なんとか越えようとあがいているようにも見える。なにかもっと普遍的なことを言いたいのかもしれないが、ものすごく照れ屋だもんで、どうしてもグロテスクな装飾をしてしまう、というか。 アメリカ文学史において、「ホラー小説」は、ポーを祖とする立派な一ジャンルだといえる。キングはもっと文学的に評価されていいと私は真剣に思っているし、キリスト教における「契約」という切り口から研究がなされてもいいのではないか(日本でこの手のホラーが生まれない理由がはっきりするだろう)。ポー、ホーソン、ブラッドベリ、ラブクラフトといった流れの頂点に、間違いなくキングは君臨している。 誰か論文書かないかな。 そんなに言うならお前がやれ、といわれそうだからここいらで退散しておきます。
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