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劇的なる精神 福田恒存 の商品レビュー

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2018/01/05

戦後日本の時代状況とたった一人で向き合いつづけた保守思想家・福田恆存の思想について考察している本です。 著者は福田を、日本には類まれな二元論者であるといい、何よりもみずからにその懐疑的な精神を向けてきた彼の思索をたどり、右も左も矜持を失い消費社会的な欲望を全面的に開化させること...

戦後日本の時代状況とたった一人で向き合いつづけた保守思想家・福田恆存の思想について考察している本です。 著者は福田を、日本には類まれな二元論者であるといい、何よりもみずからにその懐疑的な精神を向けてきた彼の思索をたどり、右も左も矜持を失い消費社会的な欲望を全面的に開化させることにのみ飽くことのない関心を抱く戦後の日本社会のなかに屹立する福田の精神を高く評価しています。 著者の関心は、福田の思想を純化して取り出すことよりも、むしろ彼が時代状況とどのように切り結んだのかということに向けられているように見受けられます。そうした観点から、著者は象徴天皇や国語改革など、福田が果敢に挑んだ論争について立ち入った考察をおこなっています。ただ「あとがき」で著者自身が明言しているように、福田と彼の論敵の議論を対比して論じるといったことはおこなわれていません。もちろん、こうした議論の仕方も一つの方法ではあると思いますが、これらの問題に対する著者自身のスタンスが前面に押し出されており、かえって福田の果たした役割が見えにくくなっているようにも感じてしまいました。

Posted byブクログ