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日本幻想文学集成(10) の商品レビュー

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2015/03/03

『少女たちの19世紀』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4000259423で、とりかえばやものとして言及されていた「秋の夜がたり」目当てで読んだ。 岡本かの子の短編集。 何気ない表現がすっと入ってくる。言葉の選び...

『少女たちの19世紀』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4000259423で、とりかえばやものとして言及されていた「秋の夜がたり」目当てで読んだ。 岡本かの子の短編集。 何気ない表現がすっと入ってくる。言葉の選び方がすごく好きだ。 華やかに飾られた言葉の中にリアルな心情が根を張っている。 綺麗なものがたっぷり出てくる美々しい文章もさることながら、誇り高さが美しい。 してあげたい、守られたいといった「女らしさ」と、そういうの嫌だなという気持ち。 箱入りのやもめ婦人が世間に相対しなければならなくなったときの強さと弱さ。 年寄り枠に押し込められて、まともに憎まれることさえなくなった年寄りの怒り。 加虐と被虐、不安と依存。 我慢できてしまう程度の嫌なことをそのままにする強さと、流したら忘れてしまうような、耐えられる程度の嫌なことを掬いとる繊細さがあるから、ただの耽美じゃない。 のびやかで優しい話も、なんとなくの死にたい気分も、同じように大切にされている。 目当ての「秋の夜がたり」は確かに「とりかえばや」の筋書きだ。 でも「とりかえたい」話じゃない。「とりかえられてしまった」話。 とりかえばやをシスジェンダーヘテロの話に組み替えたらきっとこうなる。 私はマイノリティをマジョリティにしてしまう行為は好きじゃないし、この話自体もほかの話に比べるとそんなに良いわけじゃない。 だけど、マイノリティがマジョリティの話を自分の話に読み変えるように、マジョリティがマイノリティの話を組み替えたらこうなるんだろうと興味深かった。 好まないというだけで嫌いではない。 初出をみると、「文芸」に掲載されたものが好きだ。次が「むらさき」。 収録数が少ないからこれだけではなんともいえないけれど、掲載紙によってカラーを変えているんだろうか。 もっと読んで確かめたい。 解説の読み方はあまり好きじゃない。 「白痴の理想化」が解説者の好みなのか岡本かの子を評しているのか微妙にわからない。 男女のない白痴の純粋さがどうのというのをみると、障害児の体を刻んで無性化しようとする発想を思い浮かべてしまう。→『アシュリー事件』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4903690814 小説の世界にひたりたかったのに、解説を読んだら余韻が散ってしまった。 私は文学史に興味がないのでよくわからなかったのだけれど、解説いわく、岡本かの子の特徴は大正のデカダンスを継いで、かつそこにととまらずに開花させたところにあるらしい。 よわっちくない貴族趣味。という解釈であってるかな?

Posted byブクログ