仮釈放 の商品レビュー
傑作
犯罪を犯す人間を徹底的に正直に描いている。 凄い洞察力です。
虫
土地勘もまったくない…
土地勘もまったくない、千葉県の佐倉という地名を目にすると、この本のこと思い出します。
文庫OFF
妻を刺殺し、浮気相手…
妻を刺殺し、浮気相手も刺し、刑務所に入れられた男が仮釈放されて見た世界とは。
文庫OFF
思ったより面白かった。 前半は心理描写もそこそこにさくさく話が進んでいくので、薄っぺらくない??と思っていたが、具体的に自身の犯行を振り返るシーンが出てきてからは深みが出てきて面白かった。 やはり、自分の犯した罪を心から悔いて反省するというのは、人間にとって難しいことなのだと思う...
思ったより面白かった。 前半は心理描写もそこそこにさくさく話が進んでいくので、薄っぺらくない??と思っていたが、具体的に自身の犯行を振り返るシーンが出てきてからは深みが出てきて面白かった。 やはり、自分の犯した罪を心から悔いて反省するというのは、人間にとって難しいことなのだと思う。 なのに主人公は抑制的で振る舞いも模範的だから、周りは(判決も!)「こいつはちゃんと反省している」と思いこんでいるのが興味深い。 そしてそのすれ違いが悲劇を招くというのは、「罪を償う」ことをめぐる本質をついているような気がする。 人を殺したときが逆上ではなく、逆に「感情というものがすべて欠落していた」「得体の知れぬなにかに操られているように、意志というものは全く存在していなかった」状態なのは、とても興味深い。 同時に、犯行時は「目の前が朱の色だった」というのはどういう感覚なのか、全然ぴんとはこないが変に論理立っているよりかえって説得力がある。 なんとなく、この主人公の場合は根底に女性蔑視があるように感じる。 保護観察中の人がどのように保護司と関わり合いながら社会で暮らしていくのかについても理解が深まった。 保護司、これだけの仕事を無償でやっているの改めて凄すぎる。どう考えてもきちんと対価が支払われるべき…。
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主人公は非常に真面目な人間であり、一途である。それゆえ、模範囚にもなったし、仮釈放後もしっかり働いていた。 この真面目な主人公がどうなるのか、本の残りのページ数がとても重かった。 真面目であることはなにも免罪しないし、真面目さの方向が間違っていた故に無期刑になっているわけであるが...
主人公は非常に真面目な人間であり、一途である。それゆえ、模範囚にもなったし、仮釈放後もしっかり働いていた。 この真面目な主人公がどうなるのか、本の残りのページ数がとても重かった。 真面目であることはなにも免罪しないし、真面目さの方向が間違っていた故に無期刑になっているわけであるが、それにしてもラストへの流れはキツい。
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主人公のわかりそうでわからない人物像がすごい。 殺人を犯し無期刑にもなったが、罪を悔いておらず、そのことを周囲に気づかれてもいない。主人公は生真面目な性格で、何も駆け引きを打たないが、それ故に垣間見える恐ろしさがある。 怒涛の畳み掛けとなるラストは、誰の状況も一瞬で変わり得ること...
主人公のわかりそうでわからない人物像がすごい。 殺人を犯し無期刑にもなったが、罪を悔いておらず、そのことを周囲に気づかれてもいない。主人公は生真面目な性格で、何も駆け引きを打たないが、それ故に垣間見える恐ろしさがある。 怒涛の畳み掛けとなるラストは、誰の状況も一瞬で変わり得ることを感じさせられた。
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本の紹介動画です。 https://www.youtube.com/watch?v=Hz3C6kXG7dg 2022年4月に読む本で紹介しました。動画があるのでアクセスしてください。 https://www.youtube.com/watch?v=dcuxPbpkaZ0 内容...
本の紹介動画です。 https://www.youtube.com/watch?v=Hz3C6kXG7dg 2022年4月に読む本で紹介しました。動画があるのでアクセスしてください。 https://www.youtube.com/watch?v=dcuxPbpkaZ0 内容(「BOOK」データベースより) 浮気をした妻を刺殺し、相手の男を刺傷し、その母親を焼殺して無期刑の判決を受けた男が、16年後に刑法にしたがって仮釈放された。長い歳月の空白をへた元高校教師の目にこの社会はどう映るか?己れの行為を必然のものと確信して悔いることのない男は、与えられた自由を享受することができるか?罪と罰のテーマに挑み、人間の悲劇の原型に迫った書下ろし長編小説。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 吉村昭 1927‐2006。東京・日暮里生れ。学習院大学中退。1966(昭和41)年『星への旅』で太宰治賞を受賞。同年発表の『戦艦武蔵』で記録文学に新境地を拓き、同作品や『関東大震災』などにより、’73年菊池寛賞を受賞。以来、現場、証言、史料を周到に取材し、緻密に構成した多彩な記録文学、歴史文学の長編作品を次々に発表した。主な作品に『ふぉん・しいほるとの娘』(吉川英治文学賞)、『冷い夏、熱い夏』(毎日芸術賞)、『破獄』(読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞)、『天狗争乱』(大佛次郎賞)等がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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ラストのカタストロフィが、、まあ小説だから、こうしないといけなかったのかもしれないけど。それまでの、仮釈放された重犯罪者の暮らしと心情を丁寧に追っていくところで、個人的には終わりにしてほしかったなー。それだと地味なんだろうけど。
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最初から最後まで、なんとも言えない鬱々とした気分で、読み進みました。どうなるんだろう、どうなるんだろうとドキドキします。仮釈放された主人公の不安がヒシヒシと伝わってきます。私自身、主人公とは少し違いますが若い頃、夜逃げの経験があり、世間の目を気にしながら生きていた時期があり胸が痛...
最初から最後まで、なんとも言えない鬱々とした気分で、読み進みました。どうなるんだろう、どうなるんだろうとドキドキします。仮釈放された主人公の不安がヒシヒシと伝わってきます。私自身、主人公とは少し違いますが若い頃、夜逃げの経験があり、世間の目を気にしながら生きていた時期があり胸が痛みました。人間の心の奥に潜んでいる感情、説明することが困難な部分を考えさせてくれる作品です。
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殺人を犯し無期刑をいい渡された元高校教師が、服役成績が優秀であるとして仮釈放されるものの社会に溶け込めず、戸惑いと苦しみを抱えながら生きていく姿を描く。この小説はネタバレ厳禁だと思うので詳しく書きませんが、最後の数ページは驚くような苦い展開でした。小さなメダカの命を大事にする男...
殺人を犯し無期刑をいい渡された元高校教師が、服役成績が優秀であるとして仮釈放されるものの社会に溶け込めず、戸惑いと苦しみを抱えながら生きていく姿を描く。この小説はネタバレ厳禁だと思うので詳しく書きませんが、最後の数ページは驚くような苦い展開でした。小さなメダカの命を大事にする男が、どうしてこんなことになってしまうのだろうか。 小説家というものは想像力が豊かで、なかには頭の中だけで組み立てたことを自由に書いていける人がいるのかもしれません。しかし、想像力だけで書かれた小説はどうしても薄っぺらなものになるような気がします。それに比べて吉村昭の作品は、どれもどっしりとしていて堅牢です。この小説も、淡々と書かれているようでいて実に密度が高く重いです。それは、この作品がフィクションであるとはいえ、取材を通じて得た事実によるしっかりとした裏づけがあるからでしょう。 吉村昭はまるで自らの経験を記すように、細部にこだわってとてもリアルな描写をしていきます。殺人を犯すときに目の前が朱色に染まるといった描写、独房にまぎれこんだ蠅と囚人との気持ちのやりとり、保護司はどのように犯罪者と接するのか、仮釈放の身にある者が周囲の人たちに対して抱く気持ちなど、どうして作者は犯罪者のことがこんなにもよく分かるのだろうかと驚かされます。まるで物語の中に取り込まれてしまうような、文字によるヴァーチャル・リアリティを体験させてもらいました。
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