オーレリア の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
学生時代以来の再読。かつては、この物語世界に地中海的なイメージを抱いていたのだが、今回の再読ではまったく印象が違って、ほの暗いドイツ的な影を強く見ることになった。一世代前のホフマンとの相通を感じるし、メフィストフェレスや『ドン・ジョヴァンニ』、あるいはリヒターといったドイツ的なものが随所にあるからというばかりではない。また、オーレリアとマリアそしてイシスの同一化はきわめて異教的だが、「もはや死んでしまっている」ことにおいて悲劇的でもあるだろう。あるいは、それ故にこそ自らの夢にカバラの秘跡を探すのだろうか。
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この本の、書誌的な来歴にも、初出にも底本にも翻訳にも、ここで特に詳しくは触れません。かなり前に、「ネルヴァル」というだけで手に入れたものです。今の私にわかる限りでも、より新しい訳がありますが、全集だから入手しにくいかな?今、私の手元にはこれしかないし、訳者も「ねがわくば本文のみに...
この本の、書誌的な来歴にも、初出にも底本にも翻訳にも、ここで特に詳しくは触れません。かなり前に、「ネルヴァル」というだけで手に入れたものです。今の私にわかる限りでも、より新しい訳がありますが、全集だから入手しにくいかな?今、私の手元にはこれしかないし、訳者も「ねがわくば本文のみにて、作品それ自体を鑑賞していただきたい。」と述べているのに従って、私も、まずはこれだけを愉しみました。とはいえ、ここではイメージが出ませんし、帯の惹句を引用することをお許しください。「最愛の女性オーレリアを失った痛手、運命の打撃、狂気と放浪にさまよう病める魂、人生の極限状況を詩的に探求した幻の遺作の完訳。」です。ジェラール・ド・ネルヴァルの、他の著作をご存知でお好きな方、あるいはまた、次のような文章(最初のほうからちょっとだけ引用)に惹かれる方には、ぜひ。「だれしも思い出をさぐってみれば心をかきむしられたこと、魂に、運命の打撃を受けたことのひとつやふたつはあるだろう。」…、次の文章も引用したいのですが、止めます。イジワルでも出し惜しみでも、ネタバレ回避でも、ありません。夢とか生とか狂気とか、それらは皆がそれぞれに、それぞれ必要な状況で出会う(そのように配剤されている)のかもしれない、と、思うからです。私自身もまた、今、読んで更に尚、痛い。この種の痛みに耐えられなかった(ように見える)人を、私は難ずることができません。ただ、それでも、このような「文字の連なり」を遺した人が居る、それに、そのことだけに、一筋の何かを見たいと思いつつ。そうだ、思潮社のこの本、造りも凝っていて、「仏的」「仏装」も意識されています。
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スエデンボルグも時代錯誤だし、となだらかにソッチの方面に疎んでいた時分。ネルヴァル...詩は最近、神は死んだからってそんなむせび泣くなよ、と女々しくイタイしくも感じるしようなっており、小説は読めそうもないし、好きだったんだけどなー、と思いながらも、結局手にしたこの薄い本。読み始め...
スエデンボルグも時代錯誤だし、となだらかにソッチの方面に疎んでいた時分。ネルヴァル...詩は最近、神は死んだからってそんなむせび泣くなよ、と女々しくイタイしくも感じるしようなっており、小説は読めそうもないし、好きだったんだけどなー、と思いながらも、結局手にしたこの薄い本。読み始めてみると、こんな本に出会いたかったんだと常々思っていたよ、って目をつぶって呟いた。歓喜をかみしめて、目は熱っぽく活字を追いかけていました。散文詩のように濃密で核心的な奇想の小説。手記? 抑制が効かず、たがが外れたような恍惚感が激しいほど、物悲しさが募る。歪んだ奇形。間違った異端の浪漫主義。照応ではなく見えてしまった。幻視者。シュルレリスムとゴシックがまぜこぜで、陶酔する。何かに耐え切れずブッ飛んだやけ酒の酩酊を感じる。ゴッドスピード。強烈な幻想に耽りたい欲求。雰囲気では読ませない本質的な内容を読ませるタイニーな耽美小説。ついには戻ってこれなくなった人が辿った道を綴った、神秘思想の幻想文学では核心的な作品。抑鬱と反動、そして破綻。断絶に落ちる臨界点。おもしろいですよ
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