田紳有楽 空気頭 の商品レビュー
私小説の極北。私小説…
私小説の極北。私小説といえば基本的にリアリズム小説だと思いますが、「田紳有楽」での私は古道具屋の老人で、その正体は地上に降りた弥勒菩薩です。弥勒のくせに言うことはやけに俗っぽいです。他の登場人物も、焼き物が変身した人間だったりします。さらに池に放り込んだぐい呑みが金魚のメスと恋を...
私小説の極北。私小説といえば基本的にリアリズム小説だと思いますが、「田紳有楽」での私は古道具屋の老人で、その正体は地上に降りた弥勒菩薩です。弥勒のくせに言うことはやけに俗っぽいです。他の登場人物も、焼き物が変身した人間だったりします。さらに池に放り込んだぐい呑みが金魚のメスと恋をして子供をもうけたりします。無茶苦茶ですが、いちいち妙にリアルでもあります。筒井康隆をして早くこんな出鱈目を平気で書ける老人になりたいと言わしめた一冊。実に面白いです。
文庫OFF
「田紳有楽」は、池の…
「田紳有楽」は、池の底に住む偽者の焼き物達の小説です。ものすごく奇妙な小説です。驚きます。心底驚いたあとで、「空気頭」を読み始めると、最初は正統派の私小説のように感じるのですが、やっぱり途中で驚きます。正直、シュールすぎて私には読み込めませんでしたが、コアな文学ファンには大人気み...
「田紳有楽」は、池の底に住む偽者の焼き物達の小説です。ものすごく奇妙な小説です。驚きます。心底驚いたあとで、「空気頭」を読み始めると、最初は正統派の私小説のように感じるのですが、やっぱり途中で驚きます。正直、シュールすぎて私には読み込めませんでしたが、コアな文学ファンには大人気みたいです。
文庫OFF
☆4.5 法螺も法螺、大法螺吹きの大大ペテン師 先刻承知のうへで読んでみたが、やはり噂に違はぬトンデモ小説で、突き抜けてゐる。ドグラ・マグラよりすごい。阿呆を超えて、糞真面目な馬鹿をやってゐる。金魚と陶器の恋もあれば、陶器が人間に変身する魔法もある。チベットの鳥葬の身の上話に飛...
☆4.5 法螺も法螺、大法螺吹きの大大ペテン師 先刻承知のうへで読んでみたが、やはり噂に違はぬトンデモ小説で、突き抜けてゐる。ドグラ・マグラよりすごい。阿呆を超えて、糞真面目な馬鹿をやってゐる。金魚と陶器の恋もあれば、陶器が人間に変身する魔法もある。チベットの鳥葬の身の上話に飛んだかと思ふと、阿闍梨ケ池の主の正体の話になり、便所にもぐったり唐突すぎて笑ってしまった。主人公が転換する構成がうまく、莫迦莫迦しくて笑けてくる。ただし、自然の情景描写は至極退屈である。 谷崎潤一郎賞を受賞した。谷崎は「ハッサン・カンの妖術」などの幻想小説を書いたので、ふさはしい受賞だと思った。
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血とコメディ。水木しげる先生のマンガを想起しました。或いはブルーズロックであるとか。攻撃的でありながら自嘲的であり、外在化した鏡のなかの己、人型としての己、を、鏡の外から見詰めている感覚。人間悪も人間善もごくフラットに並べて、千里眼で透き通る結晶の花と化させている、そんな感覚。ブ...
血とコメディ。水木しげる先生のマンガを想起しました。或いはブルーズロックであるとか。攻撃的でありながら自嘲的であり、外在化した鏡のなかの己、人型としての己、を、鏡の外から見詰めている感覚。人間悪も人間善もごくフラットに並べて、千里眼で透き通る結晶の花と化させている、そんな感覚。ブルーズのライトモチーフとして、悪魔との出遭いがありますが、それは人間を外在化させるためのガジェットなのだろうな、と、空気頭と田紳有楽を読み、思いました。
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自身の読書体験の中で5本の指に入る衝撃と感銘だった。 『田紳有楽』は異質な物語手法に陶器への深い愛情と知見、ブッディズムが合わさり他には無いぶっ飛び作品になっている。 特に『空気頭』は静閑な私小説的世界に、鋭いナイフの様な一言や衝撃的なフックが混ざり合う天下無双の作品。読後はし...
自身の読書体験の中で5本の指に入る衝撃と感銘だった。 『田紳有楽』は異質な物語手法に陶器への深い愛情と知見、ブッディズムが合わさり他には無いぶっ飛び作品になっている。 特に『空気頭』は静閑な私小説的世界に、鋭いナイフの様な一言や衝撃的なフックが混ざり合う天下無双の作品。読後はしばらく考えが纏まらず飲み込みに時間を要した。
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モグリ骨董屋に身をやつして浜松の街裏の二階屋に日を送っている"弥勒菩薩の化身"である磯碌億山と、彼によって庭池に漬けられた陶器たちが主な"登場人物"。グイ呑みは金魚のC子との愛欲にまみれ、抹茶茶碗は人間変身術を会得せんと大蛇のもとへと通い、...
モグリ骨董屋に身をやつして浜松の街裏の二階屋に日を送っている"弥勒菩薩の化身"である磯碌億山と、彼によって庭池に漬けられた陶器たちが主な"登場人物"。グイ呑みは金魚のC子との愛欲にまみれ、抹茶茶碗は人間変身術を会得せんと大蛇のもとへと通い、飛翔の術を操る丼鉢が滑空する。旅の途中で地蔵と出会い、億山宅には神仏が来訪する。谷崎賞受賞の『田紳有楽』は形容しがたいヘンテコな小説。「田紳有楽、田紳有楽、捉えよ、捉えよ」。 『空気頭』は妻の闘病の歴史と、著者の不倫遍歴を回顧する私小説。私小説を自分のことを書くか、他人として書くかに分類し、それまで後者を書いてきたとする著者が前者を書くと宣言したのが本作である。「平気で弱いものに冷酷になれる人、味方に似たふるまいを見せていて裏切る人、そういう人は沢山ある。そして、平生の生活で自分がその一人だという自覚がある」という通りの振る舞い(とくに妻に対して)を隠さず伝えている。いかにも昭和の作家らしい私小説作品。精力剤への異様な執着が印象的。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
田紳有楽のみ読了。 素敵な庭の描写の冒頭から、まがいものたちが素性を明かしつ明かされつ、なんだかんだで祝祭的なラストに… いつの時代の話かと思ったら、天竜川までドライブしたり、新幹線で岡山に行ったり、意外と現代にいて楽しい。 たびたび描かれる植物や骨董品がほとんど想像できずいちいち調べ、へぇ~と思ってすぐ忘れるがこれもまぁ楽しい。 森見登美彦のワイワイ系小説が好きな人には、安心して薦められそう。
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何というか呆気にとられてしまった。現実と妄想がこんな絡み方をするなんて。冒頭に筆者の断り書きがあるけれど、そんなもの消し飛んでしまった。ただ、奥様の闘病の様子が凄まじく、胸が痛む。医者ならではの冷静で緻密な描写だからこそ、静かで冷たい悲しみがひたひたと染みてくるようだ。
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【田紳有楽】 骨董屋の部屋を訪れた男が、自己流処世術を語り庭の池に飛び込むところから物語は始まる。 男は池に沈められている朝鮮生まれの抹茶茶碗の柿の蔕(ヘタ)。地下水脈を通って出歩いたり人に化けたりしている。 池の中には偽物陶器たちが埋められ、五十六億年後の弥勒説法の成仏永世を得...
【田紳有楽】 骨董屋の部屋を訪れた男が、自己流処世術を語り庭の池に飛び込むところから物語は始まる。 男は池に沈められている朝鮮生まれの抹茶茶碗の柿の蔕(ヘタ)。地下水脈を通って出歩いたり人に化けたりしている。 池の中には偽物陶器たちが埋められ、五十六億年後の弥勒説法の成仏永世を得るまでなんとかうまいことやりたいなあなどと思っている。 志野筒型グイ呑みは色気漂う金魚のC子との間に生命を超えた情欲を持ち卵を産卵させ、 モンゴルから来た丼鉢の丹波は触手を出して空を飛んだり柿の蔕と出し抜きあったり。 こんな物資を所有する人間たちだってただもんじゃない。自称『永生の運命を担ってこの世に出生し、釈迦の遺命によって兜率天に住し、五十六億七千万年後に末法の日本国に下向して龍果樹の元で成道したのち、如来となって衆生に説法すべき役目を負った慈氏弥勒菩薩の化身であるが~~~』、なんて大仰なこと言っているがこの世では老人性掻痒症(そうようしょう)に悩まされる骨董屋、 時節に合わせて姿を変える人間体の地蔵観音、 骨董屋の庭で待ち合わせする妙見菩薩北斗尊星王と大黒天の化身、 彼らはそれぞれにそれなりに五十六億年後の釈迦説法を待つ。 …なに~?五十六億年後には太陽が膨れ上がりブラックホールに地球も月も呑みこまれるから説法どころじゃないって?! こうなったら唄って踊ろう。 骨笛に銅鑼、鐘に槌。 丼鉢は飛び回り、柿の蔕は飲んだくれ。 ププー、プププー デンデンデデン、ドドン ペイーッ オム マ ニバトメ ホム ペイーッ ペイーッ 「田紳有楽 田紳有楽」 【空気頭】 冒頭で著者は二つの私小説手法について語る。 ひとつは『自分の考えや生活を一分一厘も歪めることなく写していって、それを手掛かりとして、自分にもよく分からなかった自己を他と識別するというやり方で、つまり本来から言えば完全な独言で、他人の同感を期待せぬものである』 もうひとつは『材料としては自分の生活生活を用いるが、それに一応の決着をつけ、気持ちの上でも区切りをつけたうえで、わかりいいよに嘘を加えて組立てて、「こういう気持ちでもいいと思うが、どうだろうか」と人に同感を求めるために書くやり方である。』 そして著者は「自分は今まで後者で書いてきたが、前者のやり方で書こうと思う」として、自分の生活や心情を語る。 身内の醜さには怒りを感じる。 自分の妄執、憤怒、他者への無関心を語る。 多くの兄弟を結核で亡くし、妻も同じ病で長いこと入退院を繰り返している。 病の妻との日々、妻へ愛着を感じながらも妻の死を楽しく空想する。 果たして自分たちも夫婦は二世なのか。 …そこまでは自分の現実的な過去をシビアな自己分析ていたのだが、その後は文体も内容も一変します。 自分は親族から受け継いだ静的乱脈に悩まされていました。 病の妻以外の女の躰と交わり、女の幻に追われたり、そしてその肉体から逃げ出したりします。 そんな時は自分の考えた人口気頭装置を取り出します。皮下注射に空気を入れ、針を眼球の奥から視神経交叉部へ、そして脳下垂体まで届かせ抽出液を挿入し脳内に空気を送るのです。(←この辺体がムズムズしてきたのでちゃんと読めなかったので違ってるかも/-。-;) この人口気頭装置の元は、人糞研究から考えられました。 人糞に関する科学実験、利用法、漢方効果、病気療法、飲食法、一通り試しました。(←この辺もちゃんと読むと変な臭いを感じそうで表面だけ読み~~/-。-;) 或る時自分の意識が空中に飛び、自分の躰を見下ろす経験をしました。それは糞尿からも女体からも解放された時だったのです…。 …いやいや、『自分の考えや生活を一分一厘も歪めることなく』と言って語ったのが糞尿生活に眼球から空気頭治療法って、どうなってるんだこれ(@@) 性欲や糞尿飲食や手術の描写に「これだから医者が作家になるとコワいんだよ~~(´д`)」となりながらも本から目が離せない。 いったい自分は何を読んだのだろう。全く読書と言うのは自分をとんでもない所へ連れて行く。
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