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帆船の森 の商品レビュー

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2018/10/06

『素顔同盟』の印象がとても強い。 このひとの作品が読みにくくなつてゐる昨今、教科書でとりあげられることは、再び甦ることにつながる。国語の授業は生まれに関係なく、さういふ文学の出会ひを与へてくれると思ふ。 このひとの作品のほとんどが、教科書会社で読むことが可能になつてゐるが、きちん...

『素顔同盟』の印象がとても強い。 このひとの作品が読みにくくなつてゐる昨今、教科書でとりあげられることは、再び甦ることにつながる。国語の授業は生まれに関係なく、さういふ文学の出会ひを与へてくれると思ふ。 このひとの作品のほとんどが、教科書会社で読むことが可能になつてゐるが、きちんとテキストの形態を整へてほしい。改行などがまちまちで、教材としての活用可能性を大きく損つてゐる。 大人のための空想の世界。大人のためのメルヘン。 夢とは荒唐無稽ではなく、夢があるからこそ、現実が存在できる。現実とはそれ自体で確固たるものではなく、夢や空想の存在がなければ存在できない。それほど確固たる存在ではないのだ。 大人になればなるほど、空想は排除されていく。行き場をなくした空想は、生きる世界のあちこちにひつそりと顔を覗かせる。それは喜びを伴ふこともあれば、哀しみや恐怖をつれてくる。さうしてひとは感情の生き物であることを思い出させてくれる。読んでゐると、漠然と恐ろしかつたり楽しかつたり、不思議だつたり、名づけにくい気持ちがじんわりと起つてくる。空想とは、感情が感情になる前の最初の体験ではないか、そんな気がしてならない。 書き下ろしの作品が多く、紙面の都合かわからないが、粗削りな部分が多い。空想といふものがそれほど突然にはじまり、終る突飛なことだといへばそれまでだが、作品である以上、その空想は共有されることが意識されてゐるはずだ。空想の飛躍を彼はできる限り埋める工夫をすべきだつたと思ふ。 ひつそりとしてゐるが、表紙は東逸子氏によるもの。

Posted byブクログ