モーパッサン怪奇傑作集 の商品レビュー
19世紀フランス自然主義文学を代表する作家の一人、 モーパッサンの短編のうち、怪奇幻想色の強い作品を集めた一冊。 描き出される恐怖は人の妄念、過剰な思い込み、 何ものかに対する度を越した執着によって生じており、 こうしたスタイルはフランスにおいて 後にグラン=ギニョル劇場の精神へ...
19世紀フランス自然主義文学を代表する作家の一人、 モーパッサンの短編のうち、怪奇幻想色の強い作品を集めた一冊。 描き出される恐怖は人の妄念、過剰な思い込み、 何ものかに対する度を越した執着によって生じており、 こうしたスタイルはフランスにおいて 後にグラン=ギニョル劇場の精神へと 受け継がれていったのではないかと勝手に想像する。 イギリスではドラキュラやフランケンシュタインが誕生したが、 フランスの文芸界には人智を超えたモンスターは登場せず、 狂気だの伝染病だの流血沙汰だのが恐怖譚のモチーフとなり、 人々はそんなストーリーに身震いしつつカタルシスを得ていた――と。 本の内容に戻ると、今回読みたかったのは「オルラ(Le Horla)」。 語り手は心気症に陥ったものと見えるが、 不安の塊に名を付け、外在化させてしまい、 「それ」が一人歩きして自分を襲いにやって来ると考えて正気を失う。 何でもないことに怯えて右往左往する姿は滑稽に映るが、 感受性が鋭く刺激に敏感な人は身につまされるのではないだろうか。
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「手」、怖い。「オルラ」、苦しい。でも、こういうモーパッサン、好き。そんな自分が、ちょっと恐ろしい。
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