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文学に現はれたる我が国民思想の研究 平民文学の時代(中) の商品レビュー

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2020/03/03

『文学に現はれたる我が国民思想の研究』のうち、「平民文学の停滞時代」の一篇が収録されています。あつかわれているのは化政文化を中心に、享保から天保のころまでとなっています。 元禄文化を受け継ぎ、平民が文化の中心的な担い手になったとしつつも、元禄文化に比して実りのすくない時期とされ...

『文学に現はれたる我が国民思想の研究』のうち、「平民文学の停滞時代」の一篇が収録されています。あつかわれているのは化政文化を中心に、享保から天保のころまでとなっています。 元禄文化を受け継ぎ、平民が文化の中心的な担い手になったとしつつも、元禄文化に比して実りのすくない時期とされています。読本、草双紙、人情本などは、社会の根本的な批判に踏み込むことのない表層的な滑稽を追求することに終始しており、あるいは形式的な道徳を説くものにすぎないと批判されます。一方で、小林一茶の俳諧については、生き生きとした創造性が見られるとして、「停滞時代」とされる本巻の内容のなかでは、高い評価が目を引きます。います。一茶ほどではありませんが、与謝蕪村についても一定の評価があたえられています。 そのほか、儒学や国学の道徳思想や政治思想についても評論がなされています。本居宣長の文献学における貢献については、後世に寄与するところが大きいとしつつも、国学の思想に対しては日本古来の信仰に対する独善的な帰依を出るものではなく、また彼らをはじめ当時の思想家たちが海外の事情に暗く関心さえももとうとしなかったことを厳しく批判しています。 全体を通して著者の批判的なスタンスが強く押し出されてはいますが、この時代における文学や思想を幅広く紹介しており、それらの概観を得るうえでは有益でした。

Posted byブクログ