文学に現はれたる我が国民思想の研究 武士文学の時代 の商品レビュー
『文学に現はれたる我が国民思想の研究』のうち、「武士文学の展開」「武士文学の中期」「武士文学の後期」の三篇が収録されています。あつかわれている時代は、平安末期から江戸初期までとなります。 前巻では、平安時代の一部の女流文学をのぞいて、著者の貴族文学に対する評価は厳しいものでした...
『文学に現はれたる我が国民思想の研究』のうち、「武士文学の展開」「武士文学の中期」「武士文学の後期」の三篇が収録されています。あつかわれている時代は、平安末期から江戸初期までとなります。 前巻では、平安時代の一部の女流文学をのぞいて、著者の貴族文学に対する評価は厳しいものでした。この巻に入って、武士の文化が興隆し、さらに平民のなかから国民思想がしだいに勃興してきたことに対して、やや好意的な評価が見られます。ただし、そうした思想が現実の生活に密着し、官能的・直接的な傾向に流れやすいものであるという批評もなされています。一方、鎌倉仏教に対しては、国民思想に根づいたものではないとして、きわめて冷淡な態度がとられていることも目を引きます。 前巻と同様、本書における評価の基準となっている「国民思想」が、あくまで内発的なものでなければならないとされていることについては、現在の読者としてはやはり違和感をおぼえてしまいます。
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