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ある異常体験者の偏見 の商品レビュー

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7件のお客様レビュー

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戦争体験者

実際に戦争体験をされた山本七平さんによる戦争に関する見解を述べたもの。戦争体験を伝えるのも困難で、伝えられた事を理解するのも困難である事が分かる。一般に信じられている事も事実ではないと著者は説く。たとえば中国兵を多数殺した、中国兵は弱かったとの伝説は実際には中国兵は長年の戦闘経験...

実際に戦争体験をされた山本七平さんによる戦争に関する見解を述べたもの。戦争体験を伝えるのも困難で、伝えられた事を理解するのも困難である事が分かる。一般に信じられている事も事実ではないと著者は説く。たとえば中国兵を多数殺した、中国兵は弱かったとの伝説は実際には中国兵は長年の戦闘経験から戦争経験の少ない日本兵より強く、中国兵は見つけることも困難で有ったと述べている。その他多くの興味深い記述がある。

岡博文

2021/06/04

1973年から文藝春秋に掲載されたものを文庫化。掲載当時はホットだつたのであろう長沼訴訟やPCB論文が比喩として取り上げられたり、戦中の百人斬り競争など事前の知識がないと雰囲気だけを感じとる消化不良な読後感。

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2018/03/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

大東亜戦争の体験者である筆者が語る日本軍組織の真相、武器の現実、敗戦後の現地の空気感…リアルで衝撃的な生々しい述懐の数々が読んでいるこちらをフラフラにさせる。 戦争の恐ろしさ、愚かしさ、悲惨さなど色んな負の側面をこうもリアルに語られると二度と戦争なんてやっちゃいけないって強く思わされました。 偶然情報を仕入れて、強く関心が湧いた筆者の作品はこれが初めてですが、すでにもう二冊入手済みです。もっともっと作家 山本七平 を掘ってみたいと思います。

Posted byブクログ

2016/07/27

戦争体験者が語る戦争に対する考察と提言。 言葉は難しい。戦争がどうして起こったか、起こった戦争をどう捉えれば良いのか、また戦争は起こるのか、どうすれば戦争は起きないのか。それは言葉で済む話なのか。

Posted byブクログ

2024/08/10

毎日新聞編集委員であり、『お隣り中国』(仙石出版社)の著者である新井宝雄と、彼の著書を批判した森康生とのあいだで交わされた論争に、著者が横から割って入るかたちで、新井を批判した論考がもとになっています。巻末には、著者の批判に対する新井の反論も収録されています。 著者の批判は、新...

毎日新聞編集委員であり、『お隣り中国』(仙石出版社)の著者である新井宝雄と、彼の著書を批判した森康生とのあいだで交わされた論争に、著者が横から割って入るかたちで、新井を批判した論考がもとになっています。巻末には、著者の批判に対する新井の反論も収録されています。 著者の批判は、新井に代表されるマスコミと、マスコミが信奉する戦後民主主義が見ようとしなかったものを明らかにするという手法をとっています。戦後民主主義の体質は、「皇軍の栄光」というタテマエを絶対化しそのために虚構のなかの存在と化してしまった戦前の軍国主義者たちの姿勢と、方向こそ反対であるとはいえ、変わるところはないのではないかと論じています。 著者は、あらゆる言説を「事実論」と「議論」に分けたうえで、「議論」のイデオロギー性が「事実論」を捻じ曲げてしまうことを批判します。ただこうした議論のしかたに疑問も感じます。著者の議論は、戦後民主主義のイデオロギー性を暴露するという手法をとっていますが、いっさいのイデオロギーを剥ぎ取って裸の事実に立脚するという立場は、ひとつの立場でありうるのでしょうか。われわれは、なんらかの価値へのコミットがなければ、「事実論」であれ「議論」であれ、そもそも議論をおこなう動機づけをもたないはずではないかという気がします。 相手のイデオロギー性を暴露するのではなく、たがいにどのような価値にコミットしているのかを明確にし、事実を通してその有効性を論証することこそが必要なのではないかと考えます。

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2013/08/25

戦争という異常体験を陸軍で経験した著者が、いかに日本が愚かな戦争に突入・敗北し、国民・軍人が苦しめられたか、独特の調子で語っています。それは戦前だけでなく、戦後のマッカーサー、左翼文化人、マスコミなどがヒステリックに日本人を煽動しているという主張に繋がっていきます。日本人論を戦争...

戦争という異常体験を陸軍で経験した著者が、いかに日本が愚かな戦争に突入・敗北し、国民・軍人が苦しめられたか、独特の調子で語っています。それは戦前だけでなく、戦後のマッカーサー、左翼文化人、マスコミなどがヒステリックに日本人を煽動しているという主張に繋がっていきます。日本人論を戦争から論じたとも言えます。アントニー詐術(ブルータス糾弾演説)などにも話が及び如何に情報操作また不正確情報が怖いかを教えられる山本節です。後書きにあったように、日本が他国を苦しめたということへの反省がなく、では勝てる戦争であれば、やってよかったのか?という疑問を感じる本ではありました。

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2009/11/17

本書は、文藝春秋1973年3月号~1974年2月号まで12回にわたって連載されたものを纏めたものである。約20-25ページで纏められた独立した 12のコラムから構成されてはいるが、すべて1本の線で繋がっている。端的にいうと、虚実、真偽の分析・探求・考察である。著者の従軍体験、戦前...

本書は、文藝春秋1973年3月号~1974年2月号まで12回にわたって連載されたものを纏めたものである。約20-25ページで纏められた独立した 12のコラムから構成されてはいるが、すべて1本の線で繋がっている。端的にいうと、虚実、真偽の分析・探求・考察である。著者の従軍体験、戦前・戦後の言論空間等を引き合いに出して、特に「情報」・「事実」という観点から鋭く分析されている。 本書を読んでいて気づいたことだが、30年以上前の文章であるにもかかわらず、現代に通じる指摘が多々あることである。特にマスコミの欺瞞や、左翼リベラル的平和主義と軍国主義的右翼がコインの裏表みたいなもので、本質的には同じ(戦前と戦後は方向か反転しただけで、何も進歩していない!と即断できてしまう可能性すらある)であることを様々な事例や洞察から暗喩している。 ちなみに、著者は「人間とは偏見をもつ存在であり、偏見を持たないことができるのは神のみである。偏見を持たない人間など存在しないのである」という立場を取っている為、「ある異常体験者の偏見」という名称で自己相対化している。 コラムの中から、本質をついたものと思われる2点を簡単に紹介する。 一つに「聖トマスの不信」というものがあるが、これは「事実」に関するコラムである。論旨の概略を述べると、一つの「事実」があったかなかったかという問題は、「証明」の問題であって、もし論争が起こるとすれば「証明方法」に於いてである。従って、論者の思想・イデオロギーは一切無関係である。となる。コラムの名称はイエスキリスト復活伝説の逸話を引き合いに出していることから付けられている。 また、「アントニーの詐術」というコラムもある。これは「情報」に関するものである。アントニーの詐術とは①編集の詐術、②問いかけの詐術、③一体感の詐術の3本柱から成る。 編集の詐術を特に説明すると、「事実」「事実」・・・と情報を並べて聴衆に事実のみを伝えてはいるが、そこに伝達者が恣意的に一部の事実のみを流すことによって意図した理解を聴衆がするように強制する詐術である。②や③に関しては、興味のある方は、独自に調べてもらいたい。著者はこのアントニーの詐術に対する処方箋として「アンチアントニー」で対抗することを述べている。アンチアントニーを簡単に説明すると、対立する言説を併記することである。 この本は特に思想的、イデオロギー的に視野狭窄型になっている方に読んでもらいたい内容であるが、もし身近にそのような知人がおられれば、是非紹介してみてはいかがだろうか。

Posted byブクログ