錨のない船(下) の商品レビュー

加賀乙彦【著】

2016/06/16

戦争は終結しますが、良は特攻機に乗り込んでB29戦闘機に激突し、落下傘で着地したところを民間人によって殺害され、帰らぬ人となりました。

その後、三郎が戦争裁判に引き出されるかもしれないという窮地に追い込まれながらも、みずからの疑惑を晴らすための静かな戦いをおこないます。やがて三郎もこの世を去り、老いたアリスが故国であるアメリカを訪れます。彼女もまた、三郎をはじめとする家族たちとともにあの暗い時代を生き抜いてきた一人でした。苦しい時代の中で自己の生き方を貫いた彼女も、三郎と良の後を追って、静かに息を引き取ります。

戦後の三郎とアリスの生き方の描写を通して、あの戦争を乗り越えた家族の形もこの世からなくなり、ゆっくりと次の世代へ引き継がれていくことが記されています。