錨のない船(中) の商品レビュー

加賀乙彦【著】

2016/06/16

陸軍の戦闘機に乗って日本のために戦う道を選んだ来栖良は、その容貌からいわれのない差別を受けることになります。また彼は、「大和魂」という言葉に象徴される精神性の重視になじめないまま特攻機の開発を命じられながらも、任務を遂行していきます。そんな中にあって、良は羽生や山田といった同僚たちとの間に信頼を培い、彼の身を案じる家族との心の交流を深めます。

しかし、時代の流れはますます暗い方へと向かっていくことになり、来栖家と交流のあったヘンダーソン牧師がスパイの容疑で拘束されてしまうことになります。

祖国である日本と母の国であるアメリカとの間でみずからの居場所を確保しようともがく良の強さが印象的です。