人生処方詩集 の商品レビュー

E.ケストナー【著】,小松太郎【訳】

目次によって悲しくな…

[文庫ＯＦＦ]

目次によって悲しくなったとき、老いを感じたときなど症状（？）によって読むべき詩がわかるユニークな詩集。一つ一つの詩にも哀感・ユーモアが漂っています。

2023/12/18

こんな詩集を手に入れた
「飛ぶ教室」や「動物会議」で高名な
ドイツの戦中戦後を生きたケストナーさんの
ヒトラーの熱病が国に蔓延し
狂気が雄叫びをあげ、暴力が凱歌をあげ
国内で薄氷を踏むような日常の中で編んだ
1936年処方の薬箱だ

病気や痛みを和らげる薬は別にあるかもしれない
これは　淋しさとか、失望とか
心の悩みを解毒する
「ひみつのことばたち」だ
だから目次の他にもう一つ「用法」目次がある

貧乏に逢ったら‥‥56.72.76.88.117.182.197頁を見よ、と指示がある
恋愛が決裂したら‥‥11種類もの薬が用意されている
知ったかぶりをするやつがいたら‥‥
孤独に耐えられなくなったら‥‥
幸福があまりにも遅くきたら‥‥
40枚ほどの処方箋がある
全てに3〜10の薬（詩）が処方されている

正直　全ての悩みには対処してない
正直　かなり昔の薬なので今に効かないことが多い

それでも、「もうすぐ旅に出るのですが、どんな心構えが必要でしょうか？」と
ケストナーさんにお聞きしたら
こんな素敵な詩句を与えてくださった

誰でも　もっとも謹厳な紳士たちでも
ここにいると　地球が一つの星だという気がする
そして子供たちは　綺麗な名前を持ち
ほとんど広告にあるように美しい
　　　（「リュクサンブール公園」より）

獨逸伯林から仏蘭西巴里に行っただけで
ケストナーさんはそう感じたそうだ
だとしたら、隣国に行く私の旅も
捨てたもんじゃない

2023/02/07

かなり大人向けのキツイ？処方箋。
ケストナーさんが詩人だったとは知らなかった！
このエスプリたっぷりの詩、シャンソンで聞きたい。
私もよく効いた処方でした。

2014/12/07

あんまりピンとこなかったな。それこそうわー退屈だーとか、うわーフラれたーとか、そういう時に目次を引いてそれにあった処方の詩を読むっていう使い方をすればもちっと違うのかもしれん。

2012/10/17

ｐ１２　この本はプライベートな生活の治療に捧げられたものである。大部分は類似治療の処方によって大小さまざまの生活障碍に備えたものである。これは精神薬学にあたるものであり、当然「家庭薬局」とよばれるべきものである。

詩集なのに用法が書いてある。
怠け癖がついたら。
自信がぐらついたら。
同時代の人間に腹が立ったら。
などなど。
さらば服用したまえ！なんて書いてあるけど。ほんまに効くのかな。

と思って読んだが、中身はいい意味で予想外だった。
ほとんどが皮肉でネガティブ。頑張れ、元気を出せなんて書いてない。でもそれがいい。
落ち込んでいるときは、励まされたいんじゃなくて、寄り添ってほしいもの。
まして激動の時代を生きたケストナーの言葉だ。
同じようにケストナーも苦しんだことが分かるだけで少し元気になる。
時々まったく効きそうもない詩もあるが、それもまた面白い。

2010/10/20

今となっては古本でしか入手し辛くなってしまった一冊。ケストナー好きなら読んでおきたい一品。
そのタイトルの通り、最初に「＊＊の時には」と、その時の気分・状況に応じて「＊＊ページと××ページの詩がよろしい」とガイドしてくれる「用法」のあるのが面白い。
どの詩が沁みるかはその時の気分により、必ずしも効用があると感じないものもあるのだけど、いかにもケストナーな感じの言い回しが味です。
児童文学中心で読んで来た方には多少辛い味付けに感じるかも？
ほろ苦さ、辛味の中に、モラリスト・ケストナーの「突き離しきれない」部分を感じます。

2009/10/04

「未来に向かって飛躍する人間は
たおれる
そしてたとえ飛躍が成功しようと失敗しようと―
飛躍する人間は
滅びる」