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ナーガラ町の物語 の商品レビュー

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2018/10/27

いつかはわからない、ここではない、けれどそれほど遠くもない、どこか別の町のお話。 イメージ、空想はそれ自体で何か問題が解決したり、状況を変へうる影響力をもったりすることはない。しかし、空想やメルヘンの世界があるといふことは、それだけで、生きていく力となる。 空を見上げて明日の天気...

いつかはわからない、ここではない、けれどそれほど遠くもない、どこか別の町のお話。 イメージ、空想はそれ自体で何か問題が解決したり、状況を変へうる影響力をもったりすることはない。しかし、空想やメルヘンの世界があるといふことは、それだけで、生きていく力となる。 空を見上げて明日の天気を予測する、さうして生活することはとても難しい。けれどナーガラ町では、それが立派なものとして成り立つ。もしも、ただ静かに流れる雲を見つめ、空を眺めつづけることができるならば。あの青に染まつて溶けだしてしまひたい。どこかで考へてしまふ。時にそんな自分の姿を想像してしまふ。 砂時計はもはや数ある雑貨の大量生産品となり、それ自体を作るといふことはなくなつてしまつた。けれどナーガラ町では、それがひとつの工場で立派な専門職人として認められてゐる。さらさらと落ちる青い砂。その砂で満たされた砂漠をどこまでも歩いてみたい。そんな気がしてならない。 今や、話さうと思へばいつでも顔を見て話せ、すぐに飛行機や新幹線で逢ひに行ける。けれど、傍にはゐない、遠く離れたひとを想つてゐると、心は町を飛び出して、いつかあのひとに届くこともある。気持ちははやるのに、飛行船でのんびり目指す隣町までの道のりがなぜが心地よい。 どの空想ひとつとつても、抽象的なやうで具体的、具体的なやうで抽象的、時にはそんな世界を生きること、乾ひた日々に豊かな色をつけ、生き返らせるためには大切なことではないか。ひとは「現実」にだけ生きてゐるわけではない。

Posted byブクログ