ドイツ近代の意識と社会 の商品レビュー
日本人およびドイツ人の研究者たちによるシンポジウムでの発表を中心として、5つのテーマで論文が集成されている。はじめの「近代意識の学問化」では、ヘルマン・コンリングによる「ロタール伝説」批判に始まり歴史法学の成立に至るまで、初期近代における法学を中心とした学問の近代化が扱われる。次...
日本人およびドイツ人の研究者たちによるシンポジウムでの発表を中心として、5つのテーマで論文が集成されている。はじめの「近代意識の学問化」では、ヘルマン・コンリングによる「ロタール伝説」批判に始まり歴史法学の成立に至るまで、初期近代における法学を中心とした学問の近代化が扱われる。次に、「「民族精神」論による「法社会史」の開鑿」では、主としてヤーコプ・グリムに焦点があてられ、「生ける法」を探求しようとするエールリッヒ的な試みの先駆者として評価される。第三に、「価値観対立止揚の試み」では、近代国家における法典編纂におけるナショナルな要素とヨーロッパ的要素――ドイツではゲルマン法対ローマ法というかたちをとる――に光が当てられる。第四に、「時代と知識人」では、19世紀末からワイマル共和国初期までの時代が扱われる。ディルタイとニーチェ、法実証主義者たちの「非政治的政治性」、ヴェーバーにおける政治観と大学招聘問題など、学問と政治の関係を考えるうえで非常に示唆的な問題が扱われる。最後に、「補論」として、日本における近代化の問題が思想・法継受の視角から論じられる。
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