風の盆恋歌 の商品レビュー
愛というミステリ-な行為をどの様に眺めるのか? 逃げだしていく部分と安らぎと。 「男と女」やることは同じ- その一言の中にあらゆるものが重なっている。 「とめ」という女性の持つ一つの伏流が 生き生きとしている。 「杏里」のせつない生き方。 清原という男の男としての責任のとり...
愛というミステリ-な行為をどの様に眺めるのか? 逃げだしていく部分と安らぎと。 「男と女」やることは同じ- その一言の中にあらゆるものが重なっている。 「とめ」という女性の持つ一つの伏流が 生き生きとしている。 「杏里」のせつない生き方。 清原という男の男としての責任のとりかた。 幾つものドラマが重なっている。 「死」というものを向き合わせている。 老いていく性の中で淡々とものごとを運ぶ。 その中で、日本の風景がとてもいい。
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「不倫」という言葉のもつニュアンスに似合わない二人の純粋な愛の物語でした。それは「おわら風の盆」が美しい背景を添えているからで、本当の主役は風の盆そのものなのでしょう。 1年に数日しか会えないとしても、会えるのだからうらやましい、と マディソン郡の橋のフランチェスカなら思うかもしれません。 ロミオとジュリエットみたいなエンディングだけれど、そして小説だからそうやって終わらせるしかないのだけれど、もし、現実に二人がいるなら、ずっと愛を貫いてほしいです。
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数年前に民法学者に教えられて、ようやく手に取った。そして半日で一気に読了。 「清涼感で満たされる」。加藤登紀子はあとがきでそう書いたがまさに同感。瑞々しいまでの最期。名作だ。 映画に向いてそうだけどいまだなし。 いつか風の盆に八尾を訪れたいな。(2012.8.13)
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「おわら」について知りたければこの本を、と勧められて購入した本。 ややひねりの利いた、現代版のロミオとジュリエット物語である。いかにも男性目線の夢が滲み出るような人物設定と古色蒼然としたストーリーにはひそかに反発を覚えながらも、それらを補って余りある美しい情景描写に引き込まれ、ほとんどひと息に読んでしまった。 富山県は八尾の町に残る、風の盆と呼ばれる祭り。それを幹に、そこで踊られるおわらと、粋で華麗に描かれた登場人物たちの想いや人生が絡み合っていく様が描かれる。 非現実的だと横槍を入れたくなる個所は多々あるが、流れるようなストーリー展開は十分に面白く、たまにはこんな夢物語も良い気分転換。 金沢で暮らしたことのある昭和4年生まれの著者は、相当な「『風の盆』狂い」であるらしい。実は、風の盆について書きたくて生まれた小説だったのでは、というのは、巻末にあった加藤登紀子氏の言葉。 私もまた、著者がどんな人物なのか、彼がそこまで入れ込む祭りはどんなものなのか、もっと知りたいと思わされた時点で「高橋治ワールド」に引き込まれてしまった、ということなのかもしれない。
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今年、おわらに行く予定です。ある方の勧めで読みました。衝撃が強すぎてしばらく呆然として、私の読書が止まってしまいした。 蝶の行く末の低さや今朝の秋 人生の秋に、こんな情熱の焰の燃え盛る事があるものでしょうか?風の盆の音、水の音を確かめに行って見ます。
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社会人なりたてに読んだ本ですが、こんな儚い大人の恋もあるのかなあ、と若い自分には強く印象に残った作品です。これを読んで、八尾のおわら風の盆に行きたいと思う人は多いことでしょう。私はその時期(9月頭)仕事が忙しく、まだ一度も行けていません(涙)。想いがあれば、例えどんなに月日が流れても関係ない、ということなのでしょうね。哀愁の美学漂う名作だと改めて感じ入りました。
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富山県八尾のおわら風の盆祭りは、毎年9月1日から3日間行なわれるお祭りだそう。そのお祭りを舞台に描かれる不倫のお話。互いに心をかよわせつつ、違う20年を過ごした末の不倫愛。おわらブームの火付け役となった小説らしい。結末はどこかで読んだなって感じだけど。
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以前から気になっていて、いつか訪ねてみたい祭りが二つあります・一つは、徳島の阿波踊り、リズミカルなお囃子と、足先から上に掲げられた指先まで、一本筋の通った美しさが女踊りには感じられます。 もうひとつは、富山県八尾の、おわら風の盆祭りです。川の流れの音と、三味線に胡弓が加わり越中...
以前から気になっていて、いつか訪ねてみたい祭りが二つあります・一つは、徳島の阿波踊り、リズミカルなお囃子と、足先から上に掲げられた指先まで、一本筋の通った美しさが女踊りには感じられます。 もうひとつは、富山県八尾の、おわら風の盆祭りです。川の流れの音と、三味線に胡弓が加わり越中おわら節が歌われます。徳島のものが ”動” とするなら、こちらはまさに ”静” そのもの。男踊りも女踊りも静謐(せいひつ)であり、キリリとした潔さがあり、観光客が引いた後でも、夜通し町のあちこちから少人数の夜流しの胡弓の切ない謡いが聞こえてくるそうです。9月1日から3日は、町は彼岸と此岸(しがん)の境がなくなり、あの世から戻ってきた懐かしい顔が、そこここに見られるとも言われています・・・ 著者の橋本治氏は、この祭りの持つ風合いを作品にしたかったようで、その目論見は、見事に果たせていると思いました。悲恋ですが、大人の純愛です。オススメはしませんが最後の10ページは、文字が霞んで読むのがたいへんでした。
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10年ほど前に読んだときは、すごく共感して、夢中で読みましたが、年齢を重ねて今読むとヒロインがあまりに残念な女性で、当時を恥ずかしく思いました。自分も似たような感情を持っていたので。
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水の音、風の音、音もなく動く幻想の踊り 文章には表しにくい音が実に見事に掛かれ、景色が自分の頭に描かれる、まさに現地に行ってこの目でこの2人や2人関わった偽善的ではない心優しい街の人々にふれあってみたいと思わずに居られなくなる作品 言ってみれば不倫の作品ではあるが、織姫と彦星...
水の音、風の音、音もなく動く幻想の踊り 文章には表しにくい音が実に見事に掛かれ、景色が自分の頭に描かれる、まさに現地に行ってこの目でこの2人や2人関わった偽善的ではない心優しい街の人々にふれあってみたいと思わずに居られなくなる作品 言ってみれば不倫の作品ではあるが、織姫と彦星の如く、自分達の若き頃の一番の思い出の地でその年に1回行われる祭りに再会し過去を想い、今を見つめ、そして未来を描く。 物語そのものや、その土地、背景全てが幻想に思える“素敵”な話。
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