放課後のサイエンス の商品レビュー
南伸坊氏による科学に関するコラム集。いわゆる軽薄文体というもので書かれている。読んでいくうちに「あれ?」と違和感を抱くのは、これが昭和62年に出版されたものだからである。 つまり、そこに書かれているのは昭和時代末期の科学についてなのだ。ダブル浅野がヒロインを務めるトレンディドラマ...
南伸坊氏による科学に関するコラム集。いわゆる軽薄文体というもので書かれている。読んでいくうちに「あれ?」と違和感を抱くのは、これが昭和62年に出版されたものだからである。 つまり、そこに書かれているのは昭和時代末期の科学についてなのだ。ダブル浅野がヒロインを務めるトレンディドラマが席巻していた頃の科学がそこにある。 「ロボット入門」の項などは、一番科学が進歩した分野ではなかろうか。 「タイムマシン入門」の項には時間の流れとレコード盤との関連が指摘されているが、塩ビのレコード盤に針を落としたことのあるひとでなければ、そこに書かれていることを実感することは難しいかもしれない。 逆に、「死後入門」「さとり入門」など、精神科学に近い分野では今読んでも古さを感じない。 南氏の関心は、その多くを「何かがワカル」ことに向けられている。 脳が何かをそれと認識すること―。 脳科学は日進月歩の分野だが、今でもわからないことのほうが多い。 ワカラナイことがワカルことがオモシロイのだと南氏は言う。 ワカルこととワカラナイことの間に一種のオモシロさがあるのだろう。 ワカッテもワカッテもなお、ワカラナイことだらけの分野。 ワカッタようでワカラナイ分野。 平成の御代の科学の進歩に思いを馳せつつ、時に古臭く、時に新鮮な古いドラマを見るように読んでみるのも一興か。
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