同級生 の商品レビュー
著者は、ジュニア小説や官能小説を数多く執筆しており、いわゆる文壇ではほとんど顧みられることはないようですが、谷沢永一や小谷野敦といった目利きたちが、けっして低くはない評価を与えています。本書には、比較的初期に書かれた短編8編が収録されています。 「交叉点」は、婚約者のもとへ嫁い...
著者は、ジュニア小説や官能小説を数多く執筆しており、いわゆる文壇ではほとんど顧みられることはないようですが、谷沢永一や小谷野敦といった目利きたちが、けっして低くはない評価を与えています。本書には、比較的初期に書かれた短編8編が収録されています。 「交叉点」は、婚約者のもとへ嫁いでいくことになる恵子が、幼なじみの新吉に初体験をささげる話。「一夜の宿」は、転校生の晴行が担任教師の若い妻に惹かれる話。「伝説の岩」は、友人の井上にそそのかされて町田恵子という少女を襲う計画をたてた竹井という少年が、彼女に恋をいだく話。「ベアトリーチェ凌辱」は、親友とその恋人が、不良少年の須藤に襲われることになった少年の心の揺れをえがいています。 「少年の矜持」は、みずからの性に振り回されることを潔しとしない少年と、彼のことを想う女中のせきの物語。「洗い場の女」は、一人暮らしのきぬという女性と少年の話。「二人椿」は、理恵と里子のあいだで揺れ動く光司の心をえがいた作品。そして表題作である「同級生」は、妖艶な教師の三枝子に惹かれながらも、同級生だった知子への愛に気づく壮平の物語です。 いずれも、かつての高校生の性意識をえがいています。大時代的な性へのあこがれとそれにともなう罪の意識との葛藤が、ある種の若さをあらわしていることはまちがいがないのですが、「みずみずしい」と形容されると、現代の感覚では違和感をおぼえるような気がします。
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