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無意識の構造 の商品レビュー

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2011/07/21

うーん、この本はちょっと微妙だった。 神経学・脳科学専門の人のようだが、それらの「自然科学」の知と、フロイト以降の精神分析の考え方とのあいだの溝を埋め、それらを統合するような新しい知をめざそう、というのが著者の狙いのようで、それ自体はとても魅力的な志向なのだが・・・。 前半は、す...

うーん、この本はちょっと微妙だった。 神経学・脳科学専門の人のようだが、それらの「自然科学」の知と、フロイト以降の精神分析の考え方とのあいだの溝を埋め、それらを統合するような新しい知をめざそう、というのが著者の狙いのようで、それ自体はとても魅力的な志向なのだが・・・。 前半は、すでに別の本で何度も読み、とっくに知っているような脳科学の基礎や、有名な症例(外科手術により海馬を欠損した患者が、比較的最近の記憶を蓄積できなくなる)、フロイトの概念の入門的解説など。これらは退屈で、後半、フロイト批判を繰り出す辺りからやっと面白くなってきた。 しかし結局、著者の「仮説」は一番最後に出てくるのだが、レム睡眠における脳の処理がフロイトの言う「無意識」の機制に該当するのではないか、というだけのもの。 確かにフロイトの学説は、理論的におし進めすぎてしまって、科学的に検証不可能であるという指摘はもっともだが、そこから更に大胆な仮説を出してくるのかと思ったら、拍子抜けした。 つまるところ、脳神経学の分野からも「無意識」の機能を一部説明しうるのではないか、という展望と、幼少時の体験や空想がその後の人生に多大な影響を与え続ける、という、ごく当たり前のことを確認しているだけ。 一般的読者向けに書かれた本だが、この人はもっと面白い学術論文なども書いているのだろうか。 私としては、要するに脳科学はまだまだなんだな、といつもの感慨を抱くしかなかった。

Posted byブクログ