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バルザック の商品レビュー

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2023/02/12

なかなか難しかった。  『人間喜劇』は革命期のフランスを舞台とする。革命によって、貴族を引き摺り下ろした暁には、自由と尊厳に満ちた社会が訪れると当時の人々は希望を持っていた。バルザックの父ベルナール=フランソワは哲学が(啓蒙)支配する時代を望んでいた。しかし、実際は「民衆」という...

なかなか難しかった。  『人間喜劇』は革命期のフランスを舞台とする。革命によって、貴族を引き摺り下ろした暁には、自由と尊厳に満ちた社会が訪れると当時の人々は希望を持っていた。バルザックの父ベルナール=フランソワは哲学が(啓蒙)支配する時代を望んでいた。しかし、実際は「民衆」という「野蛮人」の時代が到来した。当時の「民衆」はまだ成熟していなかった。プロレタリアートと呼ばれるようになったのは、バルザックが『人間喜劇』の本筋を完成させてからだった。  バルザックはゾラによれば自然主義系の作家と分類されているようだが、彼がものを書いていた時代は、ロマン主義系の作家が売れていた。そんな中で、自然主義的な本をバルザックは書いた。バルザックの場合、辛い現実による屈折は内には向かわず外に向かった。それが自然主義的なロマンを形成した。  とにかく、バルザックはいろんな意味で奇妙な人物である。彼自身の俗物的な魅力ある人生もあいまって、人気がある。ボードレールは、「ヴィクトルユゴーは今なお天才だが、彼の流派は絶滅寸前であり、もはや修辞家としての影響力しか持っていない。対してバルザックは今や文学運動の根底を規定している。人は彼が開いた道の上を進んでいるわけであり(中略)バルザックはフランスの明日の文学の先頭にいるのである。」と言っている。プルーストも熱狂的な信者だったそうだ。  バルザックは知れば知るほど、わからなくなるが、面白い。そんな男である。いつの間にか私自身も魅力に飲み込まれている。  文学理論とか、批評とかと相性悪いんじゃないかと思ってきた。著者のバルザック批評や周縁の資料は精緻だ。しかし、頭に入ってこない。  他の作品を読んでいつか出直したい。

Posted byブクログ