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スペイン内戦写真集 の商品レビュー

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2011/12/01

実際の記録されたものとしてのフィルムや写真の、その動かし難い真実性や圧倒的な迫力は、どんなにすぐれた作家の的確な描写や表現力を持ってしても、とうていかなわないものだということを私たちは知っています。 私は逢坂剛の熱狂的愛読者ですが、申し訳ないことに、その小説を愛し熟読すること以...

実際の記録されたものとしてのフィルムや写真の、その動かし難い真実性や圧倒的な迫力は、どんなにすぐれた作家の的確な描写や表現力を持ってしても、とうていかなわないものだということを私たちは知っています。 私は逢坂剛の熱狂的愛読者ですが、申し訳ないことに、その小説を愛し熟読すること以上に、彼が監修したこの本を、何度も何度も、それこそ目に焼きついて離れないほど、空でスケッチを描いて再現できるくらいに、執拗に見つめ続けてきました。 何故か? 日本人には馴染みの薄い未知のスペイン内戦(革命)だからこそ、知りたくて熱心に見るということもありますが、それ以上に、私たちが嫌というほど見慣れた、日本人が今までかかわってきたおおよその戦い=侵略行為と、決定的に違う雰囲気をそこに発見したからでもあります。 それは、ただ単に命令されて相手を殺そうとしている人間の形相と、はっきりと反フランコ・反ファシズムという目的意識を持って戦う人たちの様相が、まったく異なるからです。 それは、まるで形勢不利で負け戦の様子を映した写真でも、日本軍のような絶望感や悲惨さは微塵も感じられず、まだ見ぬ勝利を予感しつつ希望に燃える心意気に満ちたもので、驚嘆するものです。 ところで、私がこうしてドキュメンタリーのすばらしさに強く魅かれる性癖は、たとえば三行半を下した池上彰とも、恥ずかしながらいまだ入魂の間柄だということでもあるのです。 というのは、池上彰とは、その鵺のような客観主義に愛想を尽かして決別したとはいえ、かつて10年近くただならぬ親密な関係にあった、といっても彼がお父さん役で活躍していたNHKの『週刊こどもニュース』を熱心に見ていただけですけれど、もう金輪際すれちがうこともないと思っていたのですが、性懲りもなく、今でも継続して彼が出演しているBSの番組『池上彰の20世紀を見にいく』だけは、毎回欠かさず見ているのです。 そこで映されるものは貴重なフィルムばかりで、それこそ名もない兵隊からヒトラーもレーニンも毛沢東も実物が出てくるもので、すでにDVDで出ているようですが、私は毎回の放送を見て自分でDVDにしています。 はたして、ここでも気をつけなければいけないことは、映像につけられるナレーションが、本当に正当に的確なものなのかということです。付加される解説によって、実際の記録の真実が捻じ曲げられることがあるということを、私たちはけっして忘れてはならないと思います。

Posted byブクログ