東京城残影 の商品レビュー
江戸でも東京でもない、「トウケイ」の情景が目に浮かぶような一冊。明治という時代に乗り遅れた人々が、迷いながらも強く生きていく姿が胸に迫る。 架空の登場人物たちだけれど、その生き方、考え方、言葉の一つ一つにリアリティがあって、思わず様々な人物にその姿を重ね合わせてしまった。華々しく...
江戸でも東京でもない、「トウケイ」の情景が目に浮かぶような一冊。明治という時代に乗り遅れた人々が、迷いながらも強く生きていく姿が胸に迫る。 架空の登場人物たちだけれど、その生き方、考え方、言葉の一つ一つにリアリティがあって、思わず様々な人物にその姿を重ね合わせてしまった。華々しく活躍した人々がいた影で、名も無き人々が必死に生きていたのだという事を実感させてくれる。 辛く切ない物語だけれど、最後の結末にふっと救われた心地になって、読んで良かったと心の底から思える本。「賊軍」と呼ばれた人々が少しでも多く、この物語の信一郎のように「江戸から東京に懸かる橋」を渡る事が出来たらいい、と祈るような気持ちになった。
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箱館戦争が終わり、収監されていた元伝習隊・歩兵頭の向井信一郎が放免されて江戸に戻って来る所から物語が始まる。メインになるのは信一郎さん、そしてその奥さん、それから信一郎さんの父と懇意だった商人茂平さんとそのお妾さん。 戦争中や終戦後しばらくして生きて行く話は多いが、この話は終戦直...
箱館戦争が終わり、収監されていた元伝習隊・歩兵頭の向井信一郎が放免されて江戸に戻って来る所から物語が始まる。メインになるのは信一郎さん、そしてその奥さん、それから信一郎さんの父と懇意だった商人茂平さんとそのお妾さん。 戦争中や終戦後しばらくして生きて行く話は多いが、この話は終戦直後が舞台となっている。 戦争の爪痕が残る町、職を失った武士とその家族、傷ついた人達、そんな悲しくて切ないお話。やっぱり信一郎さんが一番可哀想な気がする。やっとの思いで帰ってきた家で悲しい出来事ばかりが待ち受けているとは……。 どんなに傷ついても、必死に立ち上がる人達が強い。あえてこの時期を描いた所が好きです。 向井さんは元伝習隊なので大鳥さんも登場。
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