NY崩壊 の商品レビュー
911テロが発生し貿易センタービルが倒壊した直後にその現場までたどりつき、シャッターを切った日本人カメラマン の写真集。実は息子たちの通う高校のOBにあたる方で、何度かお会いしたこともある。 購入したかったが新品が見つからず図書館で借りた。 どの写真を見ても感じたのは、写真とい...
911テロが発生し貿易センタービルが倒壊した直後にその現場までたどりつき、シャッターを切った日本人カメラマン の写真集。実は息子たちの通う高校のOBにあたる方で、何度かお会いしたこともある。 購入したかったが新品が見つからず図書館で借りた。 どの写真を見ても感じたのは、写真というものから常にはみ出でしまい、何枚写真を重ねても、その物凄さというものの全貌を捉えさせてくれない911の凄まじさだ。 粉塵に埋もれる店先、途方にくれる消防隊員や警察官、市民の姿はフレームに収まっても、町中を覆いこむ黒い煙や巨大なビルの残骸、瓦礫の山はいつもフレームからはみ出ていて決して見る側がその出来事の大きさを捉えようとするのを阻む。 そんな事を強く感じた。 余談だが、911を契機としてブッシュ批判を繰り広げたマイケル・ムーアの「華氏911」ではこの911の惨事の瞬間はスクリーンが真っ暗になり、崩壊の轟音だけが流れる。ジャンボ機の突入やビル崩壊のシーンを何度も見さされてきた側としては、マイケル・ムーアの手法に他と異なるものを感じたし、この写真集の写真にも近いものを感じた。 世界的なジャーナリストであった故デイビッド・ハルバースタムの著作「ファイヤハウス」は、911を招いた世界情勢や政治には一切触れず、911発生直後に救出活動に出動し、ビル崩壊で帰らぬ人となった消防署員の在りし日の横顔と、当日の行動を(わかっている部分と、高行動したに違いないという推測を含めて)語ることで人間の勇気をしずかに讃えている。一方で、ハルバースタムを以ってしもて、この911という出来事は真正面から向かうには大きすぎる、その全貌を語るには大きすぎるものだったのかもしれない。
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