貴婦人Aの蘇生 の商品レビュー
変人、と呼ばれてしまいそうな人ばっかり出てくるけど全体に注がれる眼差しが優しくて好き。 手品の最後のポーズをずっときめてる伯母さん可愛い
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死者と剥製、そして革命で命を散らしたといわれるロシア皇女、アナスタシア。 複数の「死」のアイコンを用いた、日本が舞台であると明記しているにも関わらず、異国情緒が漂う奇妙で静かな奇譚です。 小川洋子作品の骨頂である「淡泊」に「抑圧」された筆致で、どこまでも「純化」していく人々と世...
死者と剥製、そして革命で命を散らしたといわれるロシア皇女、アナスタシア。 複数の「死」のアイコンを用いた、日本が舞台であると明記しているにも関わらず、異国情緒が漂う奇妙で静かな奇譚です。 小川洋子作品の骨頂である「淡泊」に「抑圧」された筆致で、どこまでも「純化」していく人々と世界観を堪能できます。 今回も、思う存分、小川ワールドに没入させて頂きました。 この至福感は、ちょっと推理小説では味わえませんね~。 小川先生、ミステリー書いてくんないかな…← 久しぶりに自分でまとめたレビューをば…(^^)φ 亡き夫が残した剥製に、「A」の文字を刺繍し続ける伯母。 一定のルールを順守し続ける強迫観念に囚われた恋人。 私の日々の生活は、そんな二人の間に挟まれた奇妙だけど穏やかなものだった。 ある日、屋敷に収集された剥製の取材に、オハラという男が訪れるまではーー。
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この作家の作品には、しばしば何等かの障害を持った人が描かれる。 この作品の場合は、語り手の恋人であるニコがそれだ。 強迫神経症のために複雑な儀式を成功裏に終わらなければ扉を通り抜けることができない彼だが、それを見守る周囲の人々の彼に向ける眼差しは限りなく優しい。 そして、この作...
この作家の作品には、しばしば何等かの障害を持った人が描かれる。 この作品の場合は、語り手の恋人であるニコがそれだ。 強迫神経症のために複雑な儀式を成功裏に終わらなければ扉を通り抜けることができない彼だが、それを見守る周囲の人々の彼に向ける眼差しは限りなく優しい。 そして、この作品の中ではバイプレイヤーと思われる彼が、もっともいきいきと描かれているように私には見える。 この優しさは、作者が宗教者であることに由来するのであろうか? この作家の持つ静謐で透明な世界観もこれと無関係ではあるまい。 本作は彼女の作品の中では幻想的要素の非常に少ないものとなっているが、そのぶん毒が無く、読後に静かな余韻を残す作品となっている。
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剥製集めが趣味だったおじが亡くなり、病院にはいっていたおばと猛獣館で暮らすことになる。剥製を見に訪れた男がおばがロシアから亡命した皇女アナスタシアではないかと疑りはじめ、刺繍を続けるだけだったおばとの静かな暮らしが少しずつ変わっていく。ひと夏の物語、夏休み、というような「あの頃」...
剥製集めが趣味だったおじが亡くなり、病院にはいっていたおばと猛獣館で暮らすことになる。剥製を見に訪れた男がおばがロシアから亡命した皇女アナスタシアではないかと疑りはじめ、刺繍を続けるだけだったおばとの静かな暮らしが少しずつ変わっていく。ひと夏の物語、夏休み、というような「あの頃」を書いた物語で、ドラマというかどのように展開していくのか、追わせるストーリーはミステリーのようでもある。
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なんていうのだろう、なにひとつ説明できなくて、なにひとつ答えがでない話。輪郭がぼけて、ファンタジーだよと思う一方で妙になまなましくもあるような。オハラはずるいです、ちくせう。
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おばさんを気遣って、みんなの優しさがおばさん中心に向っていた。 小川さんの小説はいい意味でずっと温度が変わらないと思う。盛り上がるところがなければ、盛り下がるところもない。
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小川さんの作品は気品と静寂とミステリアスで構成されていると思う。結局の所、貴婦人Aと名乗るおばあさんの振る舞いや生活は貴婦人そのものであり、貴婦人Aが本物か偽者か、どちらであってもいいような気がする。今更、おばあさんにそんな真意を追求しなくても、いいのでは・・・。
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剥製だらけの館『猛獣館』で暮らす 私とおばさんの物語。 この本を読み終わって一番に思ったのは 嫌な人は居たけれど悪い人は一人も居なかった。 ってコトですね。 最後は泣きそうになりながら読んでました。 決して悲しい訳じゃナイけど、悲しくて とても優しさに溢れた結末でした。 や...
剥製だらけの館『猛獣館』で暮らす 私とおばさんの物語。 この本を読み終わって一番に思ったのは 嫌な人は居たけれど悪い人は一人も居なかった。 ってコトですね。 最後は泣きそうになりながら読んでました。 決して悲しい訳じゃナイけど、悲しくて とても優しさに溢れた結末でした。 やっぱりこの方のお話し 大好きです!!
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未亡人のロシア人であるユーリ伯母さんと、姪である私の、亡くなった伯父さんが残した剥製たちに囲まれて暮らす生活。 残された貴重な剥製に、一つずつAという刺繍を施していく伯母さん。 Aの持つ本当の意味、ロシア帝国を長く支配した末に崩壊した、ロマノフ家の生き残り、 剥製に導かれてやってきたブローカーのオハラ、恋人のニコの深いやさしさ、伯母さんの、決して衰えることのない澄んだブルーの瞳。 すべてがやさしさに包まれているわけではなく、にじみ出る欲求と苦労、困惑に、誰も知ることのない真実が入り乱れて 切なく、いつまでもそれは大切な記憶として、伯母さんと関わったすべての人に残る。 やっぱり小川洋子いいよね。 文も内容もいい。何にも流されることもなく世界観が完璧に作られている! 伯母さんの運命はなんとなくわかっていたけど、やっぱり引き込まれて最後の余韻までもが心地いい)^o^(
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小川洋子の文体は、どこかひんやりとした空気を持っている。 それは「ミーナの行進」のようなほのぼのした物語であってもだ。 彼女には中村航のような文体ではないことは一読すればすぐに分かるように。 登場人物たちから少し離れたところから紡いでいるような―そんな感覚に陥る。 今回の小説は短編集「海」よりも、とびきりクールで素敵だったと思う。 伯母さんはロマノフ王朝の最後の皇女・アナスタシアであるかどうかは、結局のところ分からないにしても、流れている空気がとても愛おしい。
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