モダンガール論 の商品レビュー
副題「女の子には出世の道が二つある」。といって、ちゃらちゃらした自己啓発本などではなく、歴とした近現代女性史である本書。女性史なんて堅苦しそう、どうせ女性の権利がどうとかこうとか言ってるだけでしょ?と思った人は読んでみましょう。スカッとします。昔の人はどうして戦争に協力したんだろ...
副題「女の子には出世の道が二つある」。といって、ちゃらちゃらした自己啓発本などではなく、歴とした近現代女性史である本書。女性史なんて堅苦しそう、どうせ女性の権利がどうとかこうとか言ってるだけでしょ?と思った人は読んでみましょう。スカッとします。昔の人はどうして戦争に協力したんだろうとか、良妻賢母教育なんて変だとか、そんな疑問や違和感を持つのは現代の論理を当てはめているから。過去を考えるには過去の目線が、現在を考えるには未来の目線が必要なのです。 かの有名な青鞜も、食うや食わずの女性労働者にしてみれば高学歴お嬢様の優雅なサークル。著者の舌鋒が中毒になりました。
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2000年刊。男性には無い二者択一の道。専業主婦と働く女性はどこで分岐したんだろう、という素朴な疑問から、斎藤視点で、明治から書かれた時点の2000年までの女の道。 第一章:将来の夢、みつけた では明治になって新たに女に開かれた道、女学生。職業婦人、主婦、を検証。職業婦人とは先...
2000年刊。男性には無い二者択一の道。専業主婦と働く女性はどこで分岐したんだろう、という素朴な疑問から、斎藤視点で、明治から書かれた時点の2000年までの女の道。 第一章:将来の夢、みつけた では明治になって新たに女に開かれた道、女学生。職業婦人、主婦、を検証。職業婦人とは先生とか電話交換手とか事務系の職業。 しかし第ニ章で、実は第1章であげた世界はほんの少数の「絵に描いた餅」の世界だった、ということで当時の大多数を占める”貧乏人”に光をあてる。それは農民と都市の労働者。ここでの女性の職業をいろいろ検証してる。大正期、白いエプロンをしたカフェーの女給さんの図、というのがあるが、それは関東大震災を機に大いなる変貌を遂げたというのだ。もう昨今のノーパン喫茶顔負けのいろんなサービスがあったらしい。しかもなかなか公式資料が無い、として68年の「アサヒ芸能」で有名人が、こう遊んでおった、と語った記事が紹介されている。実は和服の尻が割れている、とかエプロンのポケットの裏も抜けているとか、この中で大宅壮一さんが遊んだ「オルガン・サービス」など、想像すると、もう大正・戦前昭和の”ススンダ”風俗にびっくり仰天!なんだ大宅氏もしっかり遊んでたんじゃない、とちょっと評価下がりました。しかし斎藤氏は検証します。こうもあの手この手のサービスが出るのも女給のチップ制にあったのだ、としています。 あとは大正期の母性保護論争と今やなつかしい80年代のアグネス論争をわかり易く整理してくれました。 「婦人公論」誌上での与謝野晶子(女の経済的な独立が先決・大正7.3月)と平塚雷鳥(女に母性保護は必要・大正7.5月)、87年テレビ局に子連れ出勤したアグネス(育児と仕事を両立させたい・中央公論87.10月)と感想を述べた林真理子(育児と仕事は分離すべき・文芸春秋88.5月)いづれも子供がいて女が仕事をするには?の論争 母性は「わたくしごと」でありそれを「公の場」にもちこむのは女の甘えだ(与謝野・林)。かたや母性はわたくしごとではなくそれを「公の場」にもちこむのはけっして女の甘えではない(平塚・チャン) そしてこの対立に割って入る論客が戦前は山川菊枝。山川は両者の論争の核心を「育児と職業の両立問題」だと看破し、晶子の「女権論」と、らいてうの「母性論」、どちらも保障されねばならないが両者には社会的な変革の視点が欠けていると批判した。ここでの変革とは社会主義革命。しかも山川は「男性にも家庭に於ける態度を改善せしめ」て育児に協力させよ、としている。しかし大多数が農業の戦前、これは社会論争にはなりませんでした。 方やアグネス論争には上野千鶴子が「男が子連れ出勤をしないでいられるのはだれのおかげか」と朝日新聞88.6月で芸能人の問題をみんなの視点にズラし、さらに竹内好美がさらに林は男性社会の論理、アグネスは働く良妻賢母主義だとし、要求すべきは男に家事育児を分担させることだと主張(朝日ジャーナル55.5/28) いやいや大正から始まりいまだ解決していません。晶子は育児中の女性に経済支援などいらぬ自分で自立しろと言ってましたが、いまや児童手当があります・・ お父さんも保育園に子供を連れてってますが、男が子育てするとそれだけで新聞記事になります。 自営ならともかく雇われて働き育児するには「ばあや」なり「じいや」がいて気兼ねなくひょいと休める職場環境が必要。そこで山川の言う社会革命が出てくるのでしょうがそれは破たんしました。 明治末から現れ、今も続く女性誌の概観もおもしろい。また70年代末の会社説明会の記述。一流企業へは「現役・自宅」が条件、ああ、なつかしいですねえ、そうでした。 とまあこんな具合に、1945以前の戦前の50年と戦後の50年の女性の状況の歩みが重なると言って年表がついてますが、なるほどそうです。今はその先の時代になっていますが、さてどう進むんでしょう。
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文庫版を読んだときにはピンと来ませんでしたが、今回単行本を手にして、面白く読めたのでよございました。 斎藤美奈子は好きなので、まずは彼女の著作ってだけで、心の中の評価は高くなってしまうのですが… 戦争に積極的に参加していく女性の分析が、一番印象に残っています。
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女性の出世について、きりりとした姿勢で述べてくれた本。 「そうよねえ」と、うなづきながら、「女性」はやっぱり「男性」じゃないんだなあと、その複雑な宇宙を感じた。
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