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被曝治療83日間の記録 の商品レビュー

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2020/08/08

読んでよかった。 読んだのが、原爆の日というタイミングでもある。 「体は設計図を失ってしまった」 この事実が絶望そのもので恐怖でしかなく、どうせ死ぬならとにかく楽に…と願ってしまった。なぜ苦痛を強いる治療を続けたのか?とも。 前川医師が引くに引けない状況だった、けれども、前川...

読んでよかった。 読んだのが、原爆の日というタイミングでもある。 「体は設計図を失ってしまった」 この事実が絶望そのもので恐怖でしかなく、どうせ死ぬならとにかく楽に…と願ってしまった。なぜ苦痛を強いる治療を続けたのか?とも。 前川医師が引くに引けない状況だった、けれども、前川医師自身も献身的に大内さんに接していたことを思うと、治療が人体実験だったなどと言うのはあまりにも軽はずみなことだとわかる。 意思の疎通がとれなくなった大内さんのいのちは、生かすしか道はなかった。家族も希望を棄てていなかった。そんな状況で看護にあたった4人の看護師のインタビューはとても貴重。 間違いもなければ正解もない。 それでも、タラレバの話をするなら… 大内さんにこれから起こることを告知していれば、話せるうちに大内さんの意志を確認していれば、家族も医療関係者も何より大内さんが苦しまずに済んだのにな、と。 ※ALS患者による安楽死依頼で逮捕者が出た頃、この本の存在を知った。 この事件を受けて、各方面で様々な議論が起きたことと思うが、治療や看護など手を尽くしても「死」を避けられない人、という点で何か通じるものがある。

Posted byブクログ

2014/03/05

東海村臨界事故で被爆した3人のうち、もっとも高線量の被爆をした1人の治療記録である。一言でいえば壮絶だった。20シーベルトという、1年で浴びる放射線の許容量の2万倍という放射線を一瞬で浴びた体は、日が経つとともに凄惨な姿に変貌していく。骨髄が破壊されたため、血液が作り出せない。皮...

東海村臨界事故で被爆した3人のうち、もっとも高線量の被爆をした1人の治療記録である。一言でいえば壮絶だった。20シーベルトという、1年で浴びる放射線の許容量の2万倍という放射線を一瞬で浴びた体は、日が経つとともに凄惨な姿に変貌していく。骨髄が破壊されたため、血液が作り出せない。皮膚は剥がれ落ち、肉がむき出しになり、失われた体液の補充とともに、毎日大量の輸血がなされた。それの繰り返しで、現代医学では高線量放射線被爆に関しては全くの無力であることが、本書を読めばわかるであろう。およそ希望の持てる治療法はなく、ほとんど全て対処療法であった。唯一攻めの治療であった、骨髄移植も、最初こそ上手くいったように見えたが、結局は機能しなかった。その原因はよく分っていない。ここまですべきだったのかどうか私は疑問に思う。20シーベルトの放射線を浴びれば、現代医学では助かる見込みは100%ない。毎日苦痛を伴う検査を長時間施して、何か有望な治療をするのならいいけど、されていたのはほとんど延命治療であった。被害者は疲れ果て、変わり果て、最後は人工呼吸器で心臓が動いているだけという状態であった。ただ色々と賛否はあるだろうが、この壮絶な生の記録は、被爆の恐ろしさを知らしめてくれる記録は誰もが読んでおくべきだろうと思った。

Posted byブクログ

2012/07/18

壮絶としか言いようがない。被爆した本人もだが、医療者も  放射能の怖さを まざまざと見せ付けられた。目に見えないが、体の中ででは 予想を上回る状態を次から次へと  放射能の影響で染色体が、バラバラになった写真は 驚愕だった。 こんなに 怖い原子力を 何故 国は 推進するの?

Posted byブクログ

2012/01/20

これだけの重大事故で、これだけ悲惨な亡くなり方をした被害者が二人もいたにもかかわらず、「原子力の安全神話のもとに命の視点がないがしろにされている」という論理から「命の視点に立った、何かあった時のための医療体制を確立させる」という結論へ導かれていることに、時代の違いを感じる。 本来...

これだけの重大事故で、これだけ悲惨な亡くなり方をした被害者が二人もいたにもかかわらず、「原子力の安全神話のもとに命の視点がないがしろにされている」という論理から「命の視点に立った、何かあった時のための医療体制を確立させる」という結論へ導かれていることに、時代の違いを感じる。 本来なら、放射能というものがいかに人間の能力を越えた怖ろしいものであるかを実感し、ここまで医療面でも倫理面でも深刻な実例を目の当たりにしたならば、そもそも原子力というものに頼ろうとすること自体が問題視されるべきだろう。 この事故が、管理しているJCOの体制の甘さが招いた結果であるからだったことを差し引いても、いかに私たちの頭の中に原子力の安全と推進の神話が刷り込まれていたのかがうかがえるというものだ。 世界でも前例のない大量被ばく患者を前に、持てる知識と技術の全てを注ぎつくした医療関係の方々にはただただ頭が下がる。と同時に、被ばく事故云々とは別に、医療倫理というものを深く深く考えさせられた。 また、医師や看護師という医療に携わる人々の、医療そのものに対する意識、普通の人間としての感情、倫理という面での問題など、本当に難しく答えのないぎりぎりのところで仕事をしているその尊さと難しさを思わずにはいられなかった。 8シーベルト以上の放射能を浴びた人間の致死率は100%なのだそうだ。 今かなりの難しい病気でも、これほど簡単に致死率が100%と言われるものはないのではないか。それほど進んだ医療をもってしても、放射能とはかようにも怖ろしい、人間の能力をはるかに超えた脅威の怪物なのだ。 あっという間に読めてしまったが、涙なしには読めない。 是非、いま原子力発電を推し進めようとしている全ての人に読んでもらいたい。 原子力をコントロールするなど、人間の幻想でしかないのだ。

Posted byブクログ

2012/06/18

1999年9月30日に起きた東海村臨界事故。 本書は医療の立場から事故の検証をしたNHKスペシャル番組を書籍化したものである。 日本、いや世界といってもいいだろう、どんな最新の技術や機器をもってしても、その治療をあざ笑うかのように被曝した臓器や組織を次々破壊しつくす中性子線はこの...

1999年9月30日に起きた東海村臨界事故。 本書は医療の立場から事故の検証をしたNHKスペシャル番組を書籍化したものである。 日本、いや世界といってもいいだろう、どんな最新の技術や機器をもってしても、その治療をあざ笑うかのように被曝した臓器や組織を次々破壊しつくす中性子線はこの治療にあたった東大病院医療チームを絶望のどん底に突き落とした。 被曝患者をどうしても救いたい前川医師、しかしそれは同時に被曝患者に生き地獄以上の苦しみを与えることにもなる。助けたい、けれど治療を続けることは果たして正しいことなのか?その狭間で苦悩する医療チーム。 事故から83日後に大内氏は無残な姿となって力尽きた。そして前川医師が出した答えは「放射線の恐ろしさは人知の及ぶところではない。原子力という人間が制御し利用していると思っているものが、一歩間違うととんでもないことになる。そのとんでもないことに対して一介の医師が何をしてもどうしようもない、とても太刀打ちできない」ということだった。 こうしてこの事故に関わったすべての者に苦しみを与えた「クリーンで安全」なはずの原子力とはいったい何なのか。本書は問い掛ける。しかし我々はこの重大な問いかけに耳を傾けることはなかった。 そうしてこの事故から12年。東日本大震災によって起きてしまった福島第一原発事故。 この東海村臨界事故関係者からの命の、そして原子力への問いかけを無視した代償は大きかったのではないか。

Posted byブクログ

2012/07/13

山岸涼子氏の短編漫画「パエトーン」を思い出す。 身の程を知らず、御し仕切れない日輪の馬車を暴走させ、地上を焼き尽くした愚行。 原子力、放射能、ウラン、安全である有用であると言いながらも、決められたルールも守れず、作業の危険性を十分に知らせずに、現場の職員に業務を行わせていたその行...

山岸涼子氏の短編漫画「パエトーン」を思い出す。 身の程を知らず、御し仕切れない日輪の馬車を暴走させ、地上を焼き尽くした愚行。 原子力、放射能、ウラン、安全である有用であると言いながらも、決められたルールも守れず、作業の危険性を十分に知らせずに、現場の職員に業務を行わせていたその行為は、まさに「パエトーン」だ。 当時、放映を見た時は大変にショックだった。 ショックが大きすぎて、詳細が頭にはいらなかった。 今回は、文章でしっかり読むことができた。 被爆によって、身体が破壊されるということ。 全力で治療にあたった医療関係者の思い。 なによりも、最後まで頑張った、ご本人と家族の方々の力。 司法解剖の結果、他の痛々しく破壊つくされた臓器のなかで、心臓の筋肉だけは鮮やかに赤く残っていたとのこと。 もっともっと、家族とともに生き続けたかったことでしょう。 心より御冥福をお祈りいたします。

Posted byブクログ

2011/05/11

単行本が絶版?で、文庫版もまだ、という状況で中古購入したので高かったです(今は文庫版あり)。でも内容は、それに値するものでした。

Posted byブクログ