カノン の商品レビュー
1996(平成8)年刊。帯には「書き下ろし長編ホラー」と書かれている。 何となく気晴らしにと思い、中古で買って読んでみたのだが、意外と掘り出し物だった。 本作で嬉しかったのは、物語の中心にJ. S. バッハの「フーガの技法」中のカノンがあって、主人公の女性=瑞穂が回想する大...
1996(平成8)年刊。帯には「書き下ろし長編ホラー」と書かれている。 何となく気晴らしにと思い、中古で買って読んでみたのだが、意外と掘り出し物だった。 本作で嬉しかったのは、物語の中心にJ. S. バッハの「フーガの技法」中のカノンがあって、主人公の女性=瑞穂が回想する大学時代、教育大学なので一般学生向けにアップライトピアノを置いた「ピアノ室」が沢山並んでいて、主人公らがそこでバッハを語っているという、まったくもって我が身につまされる話なのである。 そのバッハを極めようとしていたヴァイオリンの才能ある男性=康臣が自殺して、くだんのカノンを録音したテープを遺し、それを再生すると霊が現れたり妙なことが起こったりするので、確かにこれはホラーである。が、そんなに怖くないのは、さほど人物たちが死に追いやられるほどの危険が迫らないからだ。そこで、「怖さ」そのものよりも、康臣の自殺やその過去についての謎を解くミステリ要素が強まるとともに、むしろ音楽の真摯な探究を巡って物語られるような、ある種の芸術家小説となっているのである。 もちろん、バッハについて、あるいは音楽について、もの凄いような思想が展開されるわけではないが、芸術音楽を巡るエンタメ小説としては、なかなかのものではないだろうか。 ともあれ、私自身の若い頃を思い出すようなシーンなど、個人的には満足度の高い小説だった。
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救いがあるようなないような・・・そんな話。康臣の人生はかなり酷すぎて悲しかった。彼には成功してほしかったな。正寛と康臣の関係ももう少し違うものがあると思ったら拍子抜け。瑞穂が羨むほどの仲に見えた二人だったのに。 ラストもいきなり山登りで雷に打たれって。。。 瑞穂はずっとチェロを続けてるって、その話が見たいとです。結局この話はチェロを捨てて安寧した生活を選んだアラフォー女の更年期による障害妄想なわけですよね。子供にも康臣が見えるとかそんな演出いらなかったし、何の伏線にもなってなかった。流れ的にチェリストとして大成しないだろうし、過去との決別ではっきりさせたほうが私は好き。
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20年前に愛した男が自殺した。彼が自殺しながらバイオリンを弾いた遺品のテープを聞いてから身の回りでバイオリンの幻聴が聞こえてくるようになった。チェリストとして葛西とともにバッハのカノンに魅せられた瑞穂は・・・。 ホラーなのかなんなのか。あまりにも天才すぎて自分のもって行き場がな...
20年前に愛した男が自殺した。彼が自殺しながらバイオリンを弾いた遺品のテープを聞いてから身の回りでバイオリンの幻聴が聞こえてくるようになった。チェリストとして葛西とともにバッハのカノンに魅せられた瑞穂は・・・。 ホラーなのかなんなのか。あまりにも天才すぎて自分のもって行き場がない、かわいそうな人。幸せな結婚をして息子もいて安定していた生活なのに、何故か焦燥感に襲われる。なんだか悲しい。
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今度の主人公は、仕事にも家庭にも充実を感じている40代の女性。 20代の頃の知人が自殺をし、その知人の遺品としてカセットテープを渡されてから、女性の回りで不可解な出来事が……という話。 幽霊もどきも出てきて、表紙の見返しの紹介文には「ホラー」とあるけれど、ちっともホラーじゃ...
今度の主人公は、仕事にも家庭にも充実を感じている40代の女性。 20代の頃の知人が自殺をし、その知人の遺品としてカセットテープを渡されてから、女性の回りで不可解な出来事が……という話。 幽霊もどきも出てきて、表紙の見返しの紹介文には「ホラー」とあるけれど、ちっともホラーじゃないと思う。一般的な意味での「恐怖小説」じゃない。 なんというか、一言で言ってしまえば「自分探し」とか「人生のやりなおし」に繋がる話なので、幽霊がらみの恐怖を味わいたいときに読む本じゃない。これもやっぱり感情を読む話なんじゃないかと。 ただ、どれほど充実を感じ端からもそう見える人生でも、いくらでもひっくり返る要因があるのだと、その瞬間は誰にでも訪れるかもしれないものなのだと、それを恐怖と呼ぶのなら、ホラーと言ってもいいのかもしれない。 あと、人生はちょっとした誤解と行き違いでいくらでも狂うのだということを、恐怖と呼ぶのなら。 ホラーと書いてあったので、その心づもりで読んだら拍子抜けだったけれど、ホラーということを忘れて読めば面白かった。遺品に関する謎が少しずつ明らかになっていくのと、それに伴い主人公が変化していくのに引っ張られて一気に読めた。
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