夏の夜の10時半 の商品レビュー
うだるやうな暑さ。むつとする熱気と湿気。これは紛れもない、アジアの夏ではないか。南の島に向かう飛行機の中、ふとそんなことを考へる。 『モデラート・カンタービレ』あるひは『破壊しに、と彼女は言う』のやうな印象。アルコールに溺れるその姿は『これでおしまい』のデュラスの姿に他ならない。...
うだるやうな暑さ。むつとする熱気と湿気。これは紛れもない、アジアの夏ではないか。南の島に向かう飛行機の中、ふとそんなことを考へる。 『モデラート・カンタービレ』あるひは『破壊しに、と彼女は言う』のやうな印象。アルコールに溺れるその姿は『これでおしまい』のデュラスの姿に他ならない。 どこかで破綻や終焉が見えさうな漠然とした不安。デュラスといふひとは、ひとの関係の一瞬一瞬をこれでもかといふほどに切り取る。ロドリゴ・パエストラが黄金色の畑の中で、ぎらぎらと照りつける太陽の下で命を絶つことなど誰にも予測できない。一見すれば、妻の浮気がもとで殺しをしたやうに語られるが、それも誰にもわからない。それこそ『異邦人』のやうに「太陽がまぶしかったから」といふことを考へるマリアの言ふとおりではないか。 時間は流れる。けれどそこに何か物語を進行させやうとするものはない。にわか雨が降り、夜が明け、日が昇る。時間の流れは極めて残酷に人物たちを過ぎてゆく。眠りさへもすがるしかないアルコールによつて満たされる。人物たちもその関係を今ここでみるしかない。どういつた経緯で旅行してゐるのか、何が目的でどこまでいくのか、そういつたことは何ひとつわからず、ただただローヴァーに乗せられる。さういつた人物に流れる人物たちの時間の流れとはまつたく無縁に、物語は進められるのだ。 ひたすらに、この物語を「みる」ことを感じた。
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無人島に持って行きたい本。 何度読んでも飽きない、何度読んでもなにかを感じ させてくれる本。 空想と現実が混ざり合い、複雑な三角関係が浮かん では消え、ヒロインのマリアの支離滅裂な想いによって 何度読んでも混乱に落とされます。 それでも読むたびに新しい発見があって、深い。 ...
無人島に持って行きたい本。 何度読んでも飽きない、何度読んでもなにかを感じ させてくれる本。 空想と現実が混ざり合い、複雑な三角関係が浮かん では消え、ヒロインのマリアの支離滅裂な想いによって 何度読んでも混乱に落とされます。 それでも読むたびに新しい発見があって、深い。 なにかを学んだり、教訓にするものではなく夏の じっとりした暑さや驟雨をたっぷり感じさせてくれ ます。真夏のスペインを旅している気分。 とにかく、自分を取り巻く現実を本当に忘れさせて くれるいい意味でどっぷりと重い小説です。 これからも何十回も読むことでしょう。
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積ん読を風邪ひきの休日に。酷暑と喧騒、驟雨の中に倦怠感がまたもや優雅な一冊でした。(デュラスはモデラート・カンタービレから二冊目です)特になんだろう、殺人犯ロドリゴ・パエストラと視線を交わし、迎えるまでのしばらくは彼らのじりじりとした空気がすっかりこっちに伝染してどっと疲れてしま...
積ん読を風邪ひきの休日に。酷暑と喧騒、驟雨の中に倦怠感がまたもや優雅な一冊でした。(デュラスはモデラート・カンタービレから二冊目です)特になんだろう、殺人犯ロドリゴ・パエストラと視線を交わし、迎えるまでのしばらくは彼らのじりじりとした空気がすっかりこっちに伝染してどっと疲れてしまった。ゆらゆらと愛が壊れながら旅する一場を垣間見る読書は、薄い本なのに、濃密で、ひりひりと時間は長く感じました。いつかは『愛人』や池澤夏樹も編んだ『太平洋の防波堤』が読みたいです。ていうかデュラスとサガンて!反則の取り合わせ!
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夏至も過ぎた、これからはまた日暮れがはやくなる。読み直すなら今のうちだ。というわけで、今宵はこれを。ちょうど雷鳴と雨音が。これを読むとお酒を飲んで沈没したくなる、それは『モデラート・カンタービレ』と同じ。(だけどきっと、映画的に想像できるようには綺麗に艶っぽく酔っ払うことはできな...
夏至も過ぎた、これからはまた日暮れがはやくなる。読み直すなら今のうちだ。というわけで、今宵はこれを。ちょうど雷鳴と雨音が。これを読むとお酒を飲んで沈没したくなる、それは『モデラート・カンタービレ』と同じ。(だけどきっと、映画的に想像できるようには綺麗に艶っぽく酔っ払うことはできないんだよな、……嘆息)。「マンサニリャ」というのはどんな味のお酒なんだろう、と、媚薬の名前のように聞こえるそのお酒に憧れてしまう。夏本、雨(驟雨)本。
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