デビッド100コラム の商品レビュー
橋本治の博学ぶりがよ…
橋本治の博学ぶりがよく分かる。物事の一つ一つにこだわりを見せる著者の姿勢が良い。これは難しい本ではなく、とても面白い。
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『ロバート本』(1991年、河出文庫)と姉妹編をなす、著者のコラム集です。 本書が書かれたころの著者自身の生活や世相、芸能ニュースなどを題材にとった、100篇のコラムを収めています。長いものもあり短いものもあり、著者らしい鋭い視点が示されているものもあり、どうでもいい話題をあつ...
『ロバート本』(1991年、河出文庫)と姉妹編をなす、著者のコラム集です。 本書が書かれたころの著者自身の生活や世相、芸能ニュースなどを題材にとった、100篇のコラムを収めています。長いものもあり短いものもあり、著者らしい鋭い視点が示されているものもあり、どうでもいい話題をあつかったものもありと、ヴァラエティに富んでいますが、とくに若いころの著者の本に見られる反骨精神のようなものが本書にもある程度感じられました。著者自身による巻末の「解題」には、1985年ごろからのコラムの流行を目にした著者が、「コラムというものが登場する均一世界との間に共通理解がない」ために「コラムニストに必須の“個性”」を出せず、「単なる“異質”」になってしまうほかない著者特有のものの見方・考え方をあえてコラムという形式で投げ込んだのが本書だという趣旨のことが述べられています。 しかも著者は、「『デビッド100コラム』には、実のところ「“コラム”という形式はとっても“説明”にはふさわしくない形式である」ということを証明しようという、ヘンな側面もある」という、著者ならではの再帰的な思考までもが示されており、どうしようもなくコラムそのものへの批評性を帯びざるをえない内容になっています。たとえば著者は「あの頃空は広かった」というタイトルをもつ一編で、時代小説を書こうと試みたあげく、空の青さのもつ歴史的な意味について自分がまったく知らないことに気づき、小説を書くことを中止したと語っていますが、歴史的な視座をつねに顧みる思考様式が身についてしまっているために、同時代の感性に対する再帰的な反省の意識を呼び込んでしまうことになる著者の思考様式がよく示されているように感じられます。
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