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紫電改のタカ ちばてつや全集(1) の商品レビュー

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2011/12/12

マンガはただの娯楽に堕落したのかな、何故こうも無思想・無思慮なのかしらと嘆いて、『0戦はやと』などの戦記マンガに失望していた私の前に、さっそうと現れたのがこの本、ちばてつやの『紫電改のタカ』でした。 いまや、ちばてつやは『あしたのジョー』であまりにも有名な国民的マンガ家ですが、...

マンガはただの娯楽に堕落したのかな、何故こうも無思想・無思慮なのかしらと嘆いて、『0戦はやと』などの戦記マンガに失望していた私の前に、さっそうと現れたのがこの本、ちばてつやの『紫電改のタカ』でした。 いまや、ちばてつやは『あしたのジョー』であまりにも有名な国民的マンガ家ですが、そのころの私にとっては『ユカをよぶ海』や『ハリスの旋風』や『アリンコの歌』や『みそっかす』などの生気と諧謔と哀愁に満ちた少女(少年)マンガや、何といっても超かっこいい野球マンガ『ちかいの魔球』の作者として長く君臨していましたが、こういう反戦意識をしっかり持った戦記マンガを描いていたとはまったく知りませんでした。 ただ、もちろん完全に従来の戦記マンガの格好よさを描くというドグマからは脱却できていない感じで、主人公の滝城太郎という戦闘機乗りを中心に、ともかくみんなかっこいいんですが、あっ、そうか、そういってしまっては身も蓋もないですね、そうじゃなく、銃後の親兄弟や恋人を守るために、やむを得なく敵を殺すという行為をおこなう、軍人として闘うひとりひとりや勇ましい戦闘機を美しくことは、反動でも戦争賛美でもなんでもないということです。 それにもまして強烈に目に焼きつくのは、極限状態の死と隣り合わせにある若者たちの絶望や絶叫であり、仲間うちのふざけ合いや笑い話などが挿入されるときでも、笑うと同時にすぐに嗚咽の混ざった涙が出てくるのを止められませんでした。 このマンガは、不謹慎かもしれませんがエンターテインメントでもあり、しかもれっきとした反戦マンガとして優れたものだという、稀有な傑作マンガだと思います。

Posted byブクログ