アラバスター(文庫版)(2) の商品レビュー
手塚長編にハッピーエンドはまず無いが、少年誌異例の社会復讐劇展開。養女で透明少女亜美はからかわれ続けた。彼女に「友だちになろう」と近づいたゲンは「試験ペーパー1枚で人生が決められてたまるか」という高邁で無私な動機。宝石を盗むが捕まっても亜美につき口を割らず。中学生に窃盗で「実刑2...
手塚長編にハッピーエンドはまず無いが、少年誌異例の社会復讐劇展開。養女で透明少女亜美はからかわれ続けた。彼女に「友だちになろう」と近づいたゲンは「試験ペーパー1枚で人生が決められてたまるか」という高邁で無私な動機。宝石を盗むが捕まっても亜美につき口を割らず。中学生に窃盗で「実刑2年6ヶ月」はあり得ないが、作者は“対占領軍凶行には超法規的措置”を匂わせている。支配層属するヒューズ夫人がレイプされる可能性もあったのだから。脱獄に手を貸したのが大きな組織と個人能力を入手したアラバスター(巌窟王)亜美は悪のアトム
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ネタバレ ◆外見の醜さが醜悪な心をもたらす。一見女性に妥当するかに見えるがそれは違う。本作は醜貌な男性アラバスターの醜悪な心を抉り出す。男性もその容姿は自信の源泉だからなのだろう。◆かつ著者のメスは、犯罪の追跡側、つまり善の体現者たるロック・ホームにも及ぶ。イケ面かつFBI捜査官の彼は、犯罪者女性を強姦しながら罪悪感の欠片も見せない。それだけで醜い心満載だが、極めつけはロックが顔を鉄棒で殴打され美顔を喪失する瞬間。彼は警察官としての正義面をかなぐり捨て、犯罪者追尾も頭から放逐し、美顔喪失に半狂乱と化してしまうのだ。 ◇なんと、著者の良い意味で意地悪な目線が叩きつけられたマンガだろうか…。◆1995年(初出1971年)刊行。
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アラバスターは最後まで 自分の歪んだ思想に気付くことができなかった。 ロックによるひどい仕打ちから 自暴自棄になっていた亜美は、 兄とゲンのやさしさによりほんとうの美しさに気付き 自ら命を落とした。 あとがきの北杜夫とのエピソードがおもしろかった。 「万年躁病」と手塚治虫がい...
アラバスターは最後まで 自分の歪んだ思想に気付くことができなかった。 ロックによるひどい仕打ちから 自暴自棄になっていた亜美は、 兄とゲンのやさしさによりほんとうの美しさに気付き 自ら命を落とした。 あとがきの北杜夫とのエピソードがおもしろかった。 「万年躁病」と手塚治虫がいわれてしまったのも なんだかうなづける。
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作者本人に嫌われていたことで有名な鬱作品。「バンパイヤ」(ロックが悪役で登場するところも同じ)や「MW」同様、徹底的に人間の悪の部分に迫り、誰も救われない暗い作品に仕上がっています。 一部透明になった人間や動物のグロテスクな描写は気持ち悪いの一言。それに加えて、ロックの超ナルシ...
作者本人に嫌われていたことで有名な鬱作品。「バンパイヤ」(ロックが悪役で登場するところも同じ)や「MW」同様、徹底的に人間の悪の部分に迫り、誰も救われない暗い作品に仕上がっています。 一部透明になった人間や動物のグロテスクな描写は気持ち悪いの一言。それに加えて、ロックの超ナルシストっぷりも相当に気持ち悪いです。
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人間の狂気、愚かさ、信じる心、それらが全て詰め込まれている。いつもながら手塚作品の奥深さには感心してしまう。子供が読むには手に余るような題材だ。見た目の美しさと内面の美しさ、醜い外見が人の心に及ぼす影響。考えさせられる。
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