ザ・クレーター(1) の商品レビュー

手塚治虫(著者)

2014/04/22

“「これは それぞれの人間の未来なんだ
この袋の中にそれぞれの未来がぎっしりつまってるんだ
もちろん ふつうじゃ見えない このめがねをかければ見えるんだ」
「袋か……」
「いいか オクチン
この袋は まあいうなれば粉石けんみたいなものでね
人間はこの袋からすこしずつ中身をとかしていきながら一生を歩いてる
この袋の中がカラッポになれば一生を終えるんだ」”[P.169_オクチンの大いなる怪盗]

「二つのドラマ」
「溶けた男」
「雪野郎」
「風穴」
「三人の侵略者」
「オクチンの大いなる怪盗」
「双頭の蛇」
「大あたりの季節」
「巴の面」
「オクチンの奇怪な体験」

未来の詰まった袋の話と、少女に身体を貸す話がとても好き。

20140422　再読

“「きみ たのむからこれ以上おれのからだを占領しないでくれ
だまってて何もいわないでくれよ
そうだ 一日じゅうねててくれよ」
『だって あたしがねることはあなたがねてしまうことよ』
「しようがない それじゃあ一日交代でおれときみとからだを使おう」
『いいわ じゃあお昼の十二時からあくる日のお昼までよ』”[P.303_オクチンの奇妙な体験]

2010/04/29

人間の心をテーマにした物語は30億かあるいはその10倍もあるはずである。このシリーズは、そのうちのほんのいくつかをえらんで、みなさんに紹介するのだ…。

少年誌（週間少年チャンピオン）連載ながら、一編一編の深さが秀逸の短編シリーズ。最終的には悲劇的な結末が多く、オクチンの活躍も相まってかなり読み応えがあります。「名作は色褪せない」の言説通り、発表から40年近くたった今でも読者を引き込む力は計り知れません。個人的には、「クレーターの男」や「溶けた男」、「八角形の館」といった作品が特に印象深いです。