カリフォルニア物語(文庫版)(4) の商品レビュー

吉田秋生(著者)

2022/05/30

2022.5.29市立図書館
完結。兄の視点から子ども時代を描いた番外編「夢の園」も収録。
兄を失ったヒースを待ち受けていたのはイーヴの死。自暴自棄になり窮地に追い込まれるも心ある仲間たちの気遣いでなんとか日常を取り戻していくのだが、兄ともイーヴとも正面から和解しそびれたまま生き続けなければならない主人公の未来を祈るようなラストだった。
ドイツのギムナジウム、フランス革命など圧倒的にヨーロッパを向いていた少女漫画界で、アメリカを舞台にした先行する「キャンディキャンディ」は時代がやや古く少女漫画の王道だったのことも考えると、同時代のアメリカ東西海岸の青年たちのハードモードな世界というのは革新的に新しかった、というのはわかぎえふの解説のとおりで、それにしてもこれが作者若干二十歳そこそこの作品というのにはおどろかされる。性指向、薬物、人種や家族など70年代当時のアメリカの若者のリアルタイムの悩みや問題がこれでもか、ともりこまれている。「ウエストサイドストーリー」あたりはきっと履修済だったのだろうけれど、軍隊や留置所のことなどどうやって情報収集していたのだろう？

2018/08/28

20ちょっとでこれは天才だと思うが、むしろ若いときだからこそ描けた作品なのかもしれない。巻末対談で、中島梓をお母さんと呼ぶ吉田秋生がよい。