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カムイ伝 第二部(12) の商品レビュー

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2019/12/20

第6章「野望」(9-12巻) 世に名作「カムイ伝」の評価を下げたという評価のある第二部全22巻、いつかは取り上げなくてはならないと思っていたために前回は9巻まで6回に分けて、章ごとに批評していった(2018年7月)。その続きを書く。今回は大長編となった「野望」の章の途中で、2年間...

第6章「野望」(9-12巻) 世に名作「カムイ伝」の評価を下げたという評価のある第二部全22巻、いつかは取り上げなくてはならないと思っていたために前回は9巻まで6回に分けて、章ごとに批評していった(2018年7月)。その続きを書く。今回は大長編となった「野望」の章の途中で、2年間も中断して再開し、そのまま始まった「野望」の章を最後まで見てゆく。 四代将軍家綱が大きくクローズアップされるのは第10巻だ。物語はいよいよ歴史上の人物や出来事が出現する反面、物語の中の主要登場人物はどんどん宮城音弥(草加竜之進によって命を助けられ、浪人武士の出ながら小姓から将軍教育係まで出世している)の方にシフトしていく。既に物語のテーマは第一部の階級闘争から遠く離れている。音弥は、将軍への個人教授でこのように教える。 「高貴に生まれてもそれなりの苦しみがあり、私どものように貧なる生まれにても楽しき時もございます」 「それぞれの宿命をいかに生きるか、その生き様によって、この世は地獄ともなれば極楽ともなると‥‥」 「仰せの通りかと存じまする。故にすべての庶民は、百姓も漁民も皆必ず死ななければならぬ生を生きるべく、懸命に命をかけて生きておりまする。したがって楽しむ時には、精一杯楽しみます。なれど、己の運命(さだめ)をのりこえるには、勇気なければ耐えられませぬ」 音弥は、その時のために武術の稽古も必要と話をするわけだが、ここに至るとまるで「教育論」である。支配階級の頂点に位置する将軍と庶民を、ある意味では同等の者として描いている。まあ、音弥の言っていることはその通りなんだけど、芸術論を活かして、武も極める過程は少し出来過ぎの感もなくはない。 しばらく休みを取った後に、白土さんはなんか物語の構想を此処で大きく変えた、又は諦めたのだろうか。最終巻で結論を述べたい。 此処で正助の息子一太郎が、サエサに騙されて忍びの世界に入っている。忍びの世界をヤクザの世界に置き換えれば、サエサの心変わりも一太郎の不良化もガッテンのいくことである。ここでカムイは甥のために、いっぺんに教育するのではなく、おいおいと見守る方針を立てたようだ。それが果たしてうまくいくのか、私などは疑問である。 酒井と「影の参謀、猿投沢城主、望月佐渡守」との密謀は、四巻かけて半分くらい明らかになった。酒井雅楽頭の独裁への野望はどのように画策されて、どのように潰れるのか?現代の眼から見たらどう見えるのか?果たしてそこまで、話は行くのか?見守りたい。

Posted byブクログ