カムイ伝 第二部(6) の商品レビュー
第五章「無宿溜(スラム)」(6巻-8巻)。なぜ第五章がこの題名なのかは、途中に判明する。竜之進は、日置で助けた日州との出会いで、江戸のまちづくりの人夫の杖突(現場監督)として、新たな仕事を始めていた。しかし、牢人の身分から変わるというだけで、これが彼の人生というわけでも無い。ただ...
第五章「無宿溜(スラム)」(6巻-8巻)。なぜ第五章がこの題名なのかは、途中に判明する。竜之進は、日置で助けた日州との出会いで、江戸のまちづくりの人夫の杖突(現場監督)として、新たな仕事を始めていた。しかし、牢人の身分から変わるというだけで、これが彼の人生というわけでも無い。ただ彼がこのスラム街に興味を持ったのは工事現場監督が好きなわけではなく、おそらくどんどん人口が増えて「新しい街」が出て行くことに、何かの刺激をもらったからに違いない。「第三の道を探している」。読者の私には見当も着かない。 此処にきて酒井雅楽頭忠清がきちんと登場した。佐渡守が酒井雅楽頭の参謀的役割をしていることも判明。竜之進があれほど活躍しても、まだ正体に気がついていないのは少しどうかと思うが、忍びの使い方はなかなかである。彼らが(1)何処で結びつき(2)野望は何か(3)その動機は何か。白土三平は解明することを約束している(8巻155p)。これもどうやら未完に終わっている。 「異変」の節において、スラム街で医師の道無とサブ(カムイ)の叩く太鼓が古代の血を呼び起こす。白土三平がなぜここで、この重要な「山丈」を出さなくてはならなかったのか?この小さな共同体が白土三平の目指しているものなのか。山丈の「オォー、カムイー」という叫びは、何に対して叫んだものなのか。我々は、慎重に見定めなくてならない。よって、答は保留したい。この場で、サブ(カムイ)、竜之進、音弥、堀田正俊、道無、アヤメ、房州、日州が揃っていたことは、記憶しておかねばならない。 ん ただ、言っておかねばならないのは、第一部において、山丈の登場はいつも作品のテーマに係る場合だった(カムイの登場、白狼カムイの登場、日置大一揆)。このスラム街はこのあと、酒井らの陰謀によって潰されるのではあるが、その後も彼らは浪人や非人、放浪する民として漁業や土木工事などに全国に散らばることになる。この時点まではこれらが何らかの役割を果たすことになっていたのではないか。それと、影衆の役割も不気味である。
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