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山本周五郎傑作選 かあちゃん・将監さまの細みち の商品レビュー

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2009/10/04

ずっと気になっていたけど読んでいなかった山本周五郎の作品を 図書館で借りて新潮カセットブック版で、初めて読みました。 病で3年床に伏している旦那と3つになる息子を養うために 茶屋奉公へ通いででているおひろ。 「50年前。50年後。」 それが何なのかは最後に説明されるのだけれど、そ...

ずっと気になっていたけど読んでいなかった山本周五郎の作品を 図書館で借りて新潮カセットブック版で、初めて読みました。 病で3年床に伏している旦那と3つになる息子を養うために 茶屋奉公へ通いででているおひろ。 「50年前。50年後。」 それが何なのかは最後に説明されるのだけれど、そのつぶやく 悲しい声をきくと、なんとなく分かる。 ただ、私は50年後になったら旦那が死んでいなくなっているのだから、 というつもりで聴いていたけど、本当は自分も死んでいなくなるから ということだった。これは今の寿命と昔の違い。 50年前には自分は生まれていなかった。 そして50年後にはもうこの世にはいない。 辛いことがあっても、同じこと。 つねさん(常吉)という幼馴染がおひろを2年も探して見つけてたずねてきてくれた。 辛い思いや後ろめたい思いはさせないように自分が守るから、一緒になってくれという。 病気がだいぶ前からよくなりながらも働かず、愚痴ばかりを毎日言い続ける夫と いじわるやいやみを言われる仕事場の往復の日々。 私だったら、耐えられない。でも、耐えるしかないのか。 そんななかにつねさんが現れたのに、結局は改心したと言う旦那を選ぶおひろ。 つねさんのおもいだけで十分だ、これで旦那を捨てて一緒にまでなったら 「ばちがあたる」と自分に言い聞かせる女のかなしさ。 おひろさんの視点でじっくり描かれていて、動作ひとつ、言葉ひとつとっても表情や 悲しさが伝わってくるいい作品だった。

Posted byブクログ