水俣からの想像力 の商品レビュー

丸山定巳(編者),田口宏昭(編者),田中雄次(編者)

2024/07/12

こいつはね、盗聴せんせ。
いちばんの親友なんだけど、盗聴癖があってね。大学教授をしていたんだけどね、学生の談話室に盗聴器を仕掛けてね、オープンテープで録音していたんだ。
それをね、話した内容とは正反対の内容に編集しなおすプロでね。
ずいぶん敵を疑獄にかけたものだよ。
ボクとこいつは前衛でね、ゲイ。男と女でやる奴は時代遅れだよ。サルとかわらんね。でもね、ひとつ苦情を言うとね、こいつのちんちんがちいさくてね、まいったよ。でもね、ボクのケツの穴もちいさいからぴったりでね。
死んだね。いまから１０年前。がん。７４だったよ。泣いた。
ああ、よかったってね。僕の悪事を全部知っているやつだったからさ。いなくなってね。最新の抗癌剤を勧めてやったよ。
教養部の講師になる時にね、２０００万、そのことバラされたらどうしようって、ずっと心配していたんだ。学部の方に移るときにね、３０００万、もう喜んでね。名誉だけでいいなんて思っていたのに、お金まで入ってきたってね。
それからこいつはボクのいいなり。
ボクの言うことはなんでも聞く、ドレイになったんだよ。
ボクがお金で大学院に入ったことも、国立大の教養部の椅子を買ったことも内緒だよ。言っちゃだめだよ。言ったら政治家をあてがうよ。人権弁護士だよ。ボクのすることに口出しするやつはみんなそうやって潰してきたんだから。怖いよ。