カギ の商品レビュー
1年365日何かを読まない日はないというのに現代小説は原文であれ邦文であれとんとご無沙汰である。文学部英文科というところを出て大学で講義を持っているくせに繙くのは研究書ばかり。うちの嫁は演劇の専門家でやはり大学で教鞭をとっているが100ページ以上の小説は横光利一と菊池寛以外この十...
1年365日何かを読まない日はないというのに現代小説は原文であれ邦文であれとんとご無沙汰である。文学部英文科というところを出て大学で講義を持っているくせに繙くのは研究書ばかり。うちの嫁は演劇の専門家でやはり大学で教鞭をとっているが100ページ以上の小説は横光利一と菊池寛以外この十年間読んだことないらしい。芝居を見てると小説がまどろっこしくて読めないという。同業者はたいがいそんなものだろう。 清水博子の『カギ』を教えてくれたのは出版社勤めの友人で、理由は苦楽園時代の八島シェフのお店が出てくるからだ。この友人は東京在住でエノテカは神戸の店しか行ったことないはずだ。私が連れて行った。ジビエをたらふく食ってスーパートスカンをしこたま飲んで大満足だったから八島シェフの食事のことは明晰に憶えていたのだろう。 読みはじめて案じてた以上につまらない作品であることがすぐに分った。ダラダラ読み進めてゆくと109頁に至ってようやく八島シェフのお店が登場した。しかし状況描写も何もない。というかこの小説には描写というものが皆無に近い。こんなんじゃ作者も推敲しようもなかったろう。 先になってまた出てくるのかもしれないが、あんまり退屈なのでこれ以上読むのはやめにする。読了したらシェフに進呈しようと思っていたが、こんな冗長なものを贈答品にしたら却って失礼に当るような気がしてきた。 速攻で古本屋行きにするしかないようだ。
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いちどよんでみないとわからない読んだ人にだけわかる一瞬があるんだけど それは書評や紹介のあらすじ的なところにも利用されやすいこの本を読んでいるときに感じるとある一瞬のしくみである。もうこの文章でさえ、何らかの心構えを植えつけてしまうということはあるのだろう。そのことがどれだけくや...
いちどよんでみないとわからない読んだ人にだけわかる一瞬があるんだけど それは書評や紹介のあらすじ的なところにも利用されやすいこの本を読んでいるときに感じるとある一瞬のしくみである。もうこの文章でさえ、何らかの心構えを植えつけてしまうということはあるのだろう。そのことがどれだけくやしいかと思うのだが、そのことについてふれずにはいられないほど、 その一瞬についてわたしは感心したものだ。なんというか文章については「やってみる」という要素の強い感があるが、それらが良くも悪くも小説の存在感をきわだたせている。
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