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時代劇ここにあり の商品レビュー

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3件のお客様レビュー

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2023/11/12

映画評論家が、戦後まもない頃から2000年前後に公開された時代劇映画105本をダイジェストで紹介。ストーリーはラストまで紹介されているので、既に映画を観た人や、ストーリー全体を知って興味を持った作品を観てみたい、という人にはおすすめ。 斬り合いや戦、仇討ちなどが本筋なのでどうし...

映画評論家が、戦後まもない頃から2000年前後に公開された時代劇映画105本をダイジェストで紹介。ストーリーはラストまで紹介されているので、既に映画を観た人や、ストーリー全体を知って興味を持った作品を観てみたい、という人にはおすすめ。 斬り合いや戦、仇討ちなどが本筋なのでどうしても暗い話が多くなる。そんな中でも陽気な時代劇(市川雷蔵の「浮かれ三度笠」など)も紹介され、ニヒルと悲愴感の雷蔵とは違った作品も観てみたいと思った。 リアルで残酷描写があるものから、定石もの、ケレン味たっぷりに娯楽に徹したものなど様々。600ページ弱に戦後時代劇映画の作品群が凝縮されている。

Posted byブクログ

2013/03/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

かなり偏った映画評論集。筆者の好みだけで選び抜かれた時代劇映画選集といった方がいいかも知れない。それでは、川本三郎がよしとする時代劇とは何か。それは「股旅もの」である。巻頭に「股旅もの映画の魅力-汚れちまった悲しみに」という一編が置かれている。 「時代劇には、剣豪もの、捕物帖、仇討ち、お家騒動など様々なジャンルがあるが、一番好きなのは、股旅ものだ。どの組織にも属さない一匹狼が、やくざ世界のしがらみのなかでがんじがらめになりながらもなお意地を貫き通して生きてゆく。決して颯爽としたヒーローではない。世間に逆らい、苦しみながらそれでも旅鴉の生き方をまっとうしようとする。その傷だらけの姿が胸を打つ。」 徹底的にセンチメンタル。弱者の怨念が裏返って牙を剥き、制度や強権に刃向かって壮絶に戦って後果てるというルサンチマンに凝り固まった時代劇観である。時代的制約というものがある。著者自身も言及しているが、既成政党から見放され、頼りにした市民との連帯を得ることもなく、60年安保に破れた世代の挫折感、敗北感をやくざ渡世の裏街道を生きる一匹狼の心情に仮託しているのだ。 それがいけないと言っているのではない。むしろこうまではっきり表明されると、意外な気がするくらいだ。長谷川伸の『瞼の母』や『沓掛時次郎』に代表される股旅ものは、旧世代の日本人によって愛され続けてきたジャンルであった。義理人情のしがらみ、世間というものの圧力、共同体の掟といった見えないもののたしかに存在する強制力の前に徹底して無力であり、無力である自分を肯定するために憾みをのみながら忍従する処世術をとる。それこそ、ニーチェがルサンチマンと呼んだ奴隷の道徳にほかならない。 股旅ものを嫌った大井広介が、股旅ものの主人公は正々堂々と戦わず逃げてばかりいるとけちをつけているのに対し、市川雷蔵主演の『大殺陣・雄呂血』の主人公の言葉を引いて川本は言う。「卑怯で隠れたのではない。追われる者の悲しい性(さが)だ。」「一匹狼たちは、逃げ続ける者、追われる者である。窮屈な世間をさらに狭くして裏街道を逃げのびている日陰者である。初めから剣豪や正統的な侍とは立場が違う。それを逃げ隠れするな、堂々と出て来て闘えというのは、しょせん「追われる者の悲しい性」を知らない強者の論理である」と。 自己自身を肯定できないルサンチマンの持ち主は相手に対する反抗をせめてもの創造的行為とすることで自己の肯定感を得ようとする。他者に対して否を唱えることではじめて自己が正となるからだ。彼らが絶望的な戦いに向かってゆくのはそうすることでしか自己を確認できないからだ。同じことは対女性関係でも言える。股旅もののヒーローは女に惚れても手を出さない、命がけで相手を守るだけだ。われらが国民的ヒーロー車寅次郎が同じ系譜に属することは言うまでもない。 大衆娯楽として発展してきた時代劇映画の中から徹底して弱者の視点にこだわった作品ばかり選び抜き、簡単なストーリーの紹介と見所を押さえた上、そのどこが胸を打つのかを熱っぽく語る。こうまで一つの主題を一貫して映画を語った評論集というのもめずらしい。巻末のDVD等で見られる作品紹介が親切。公開当時のポスター写真も多く、見ているだけでも楽しい。各章とも最後に女優についての一言があるのが川本三郎らしい。

Posted byブクログ

2015/02/08

時代劇というより、チャンバラが大好きです。 付き合った人のほとんどすべてから変態扱いされても、この嗜好だけは変える気になれません。 まあこれも、刷り込み、父の影響ですけれどもね。 父は小学校に上がる前から、というよりもっと遙か以前の物心つく前から、毎日といっていいほど、祖父に...

時代劇というより、チャンバラが大好きです。 付き合った人のほとんどすべてから変態扱いされても、この嗜好だけは変える気になれません。 まあこれも、刷り込み、父の影響ですけれどもね。 父は小学校に上がる前から、というよりもっと遙か以前の物心つく前から、毎日といっていいほど、祖父に映画に連れていかれたそうで、そこでチャンバラと西部劇と日活無国籍映画の洗礼を受けたといいます。 その頃の色あせた写真には、ギターを抱いて拳銃と日本刀を振りかざした姿が映っていて、実際に本気で将来は映画スターになろうと思っていた時代もあったらしいのです。 それはともかく、私も門前の小僧で、週に何本も見に連れていかれて映画にイカレテしまいました。 残念ながら、この本に紹介されているチャンバラ映画93本の一部しか私は見ていません。その逆に父はすべて見ているという。そして今回これを機会に知ったことですが、そのほとんどが我が家のライブラリーにあるといいます。知りませんでした。 私の知っているチャンバラは、大半がTVで見た「鬼平犯科帳」や「腕に覚えあり」や「柳生十兵衛」なのです。 はい、今からこの本でもっと勉強します。 さてさて、文学・映画でお世話になっている川本さんは、なんという幸運かつ奇跡的か、私の好きな西部劇も時代劇も好みでいらっしゃるとは、マンガ雑誌でこの連載を発見した時は、狂喜乱舞したものです。 ところで、私は西部劇でのジョン・ウエインが苦手なように、チャンバラでも市川雷蔵が苦手です。 好きなのは、滅法強くて色っぽい近衛十四郎・東千代乃助・大友柳太郎で、あと破格の怪優=勝新太郎は別格です。 今一番は村上弘明、彼の立ち回りは美しい。

Posted byブクログ