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狂女王フアナ の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2021/11/29

プラディーリャ・フランシスコの描いた「狂女 フアナ女王」 奥の暖炉では赤々と炎が燃えていて、レンガの敷き詰められた床にはおままごとの道具や長い槍を持った馬に乗った騎士などの人形が散らばっている。 無造作に重ねて敷かれた段通の上に母親の膝に向かって遊ぶ赤い服の少女の後姿。 窓の外に...

プラディーリャ・フランシスコの描いた「狂女 フアナ女王」 奥の暖炉では赤々と炎が燃えていて、レンガの敷き詰められた床にはおままごとの道具や長い槍を持った馬に乗った騎士などの人形が散らばっている。 無造作に重ねて敷かれた段通の上に母親の膝に向かって遊ぶ赤い服の少女の後姿。 窓の外には荒涼とした寒々しい風景が見え、窓の近くに吊るされた黄色い小鳥の入った鳥篭。 少女が向き合う母親は、黒い服に白い帽子。 極めて端正な面立ちの女性のその瞳は何かを見据えようとしているが、心のバランスを失っている。 暖炉の前には、少女とその母親を見守るように腰掛けている女官と召使がいて、暖炉の横には檻のような飾り模様のある柵が見える。 フアナはアラゴン王家のフェルナンド王とカスティーリャ王家のイサベル王女との間に次女として1479年に生まれる。 王女としての教育をしっかり受け、美しく成長したフアナは、16歳で、神聖ローマ皇帝マクシミリアン一世の長男のフェリペと結婚。 フェリペ美公と呼ばれるフェリペは、女癖の悪い計算高い人物でだった。 フアナはフェリペとの間に6人の子を成した。 次女として生まれたフアナでだったが、長男が亡くなり、長女も亡くなってしまったため、カスティーリャ王家の継承者になってしまった。 フアナは自分の両親と夫との軋轢や、夫の素行などが原因で、徐々に心を病んでゆく。 母、イサベルが亡くなり、父フェルナンド王と夫との王権争いの最中、夫フェリペはなんらかのウィルス性疾患であっけなく急死してしまう。 フアナ狂女伝説はこのあたりからエスカレートしていく。 死んでいるフェリペはただ眠っているだけだと言ったり、 棺を開けて安置されている夫に口づけていたとか 遺体と一緒に夜な夜なカスティーリャの野を彷徨っているなど。 これは事実と違う部分も多々あるようだが、フアナが夫を亡くして心から嘆き悲しんだことは事実であり、精神のバランスを欠いて、夫が死去して数ヵ月後に生まれたカタリーナとトルデシーリャスに父のフェルナンドに幽閉されていたことも事実。 プラディーリャ・フランシスコの描いた「狂女 フアナ女王」はその軟禁されていたときのもので、フアナの膝で遊んでいた赤い服の少女はカタリーナ王女。 フアナは75歳で生涯を終える。フアナの生んだ6人の子供たちは皆成長し、 長女レオノールはポルトガル妃、フランス妃に。 長男カルロス一世は神聖ローマ皇帝カール五世に。 次女イサベルはデンマーク妃に。 次男フェルディナンドは神聖ローマ皇帝に。 三女マリアはハンガリー王妃に。 四女カタリーナはポルトガル王妃に。 そしてフアナはカスティーリャ王女のまま死んでいった。

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2021/07/18

ホセ・ルイス・オライソラの『王女ファナ』でだいぶお勉強したから、結構ついていける…と読み進んだら、既視感バシバシ(涙)そりゃそうよ、元ネタは同じよ。 ま、でも、ちょいちょい著者がファナゆかりのマイナーな場所へ行き、訪問記コラムを挟んでるのが地味に興味深い。 あと、夭折する人の...

ホセ・ルイス・オライソラの『王女ファナ』でだいぶお勉強したから、結構ついていける…と読み進んだら、既視感バシバシ(涙)そりゃそうよ、元ネタは同じよ。 ま、でも、ちょいちょい著者がファナゆかりのマイナーな場所へ行き、訪問記コラムを挟んでるのが地味に興味深い。 あと、夭折する人の多い中、生き残った兄弟姉妹に娘息子に孫達…の多忙なこと。離れた土地を領有する王室って、ホント大変そう。 特に、ファナの末娘・カタリナがポルトガル王室へ嫁ぎ、産んだ王子に姪(兄・カール5世の娘)を嫁に貰い、孫息子が誕生…するものの、息子が死んだら、嫁は実家へ戻る。なんと甥で嫁の兄・フェリペ2世がメアリー1世と結婚したからだって。兄は神聖ローマ皇帝で飛び回ってるし、甥はイギリス、自分は婚家で孫息子を養育し、嫁は実家で摂政…( ̄▽ ̄;)

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2021/04/20

著者がフアナのことが好きな気持ちが伝わってくる本でした。丁寧に調べられていて、現地にも行かれていて、読んでいて楽しめました。 フアナのことは、私も少しは知っていましたが、やはり1冊の本で読むと、時代背景や他国とのつながりもよくわかり、理解が深まります。 彼女は「狂っている」と...

著者がフアナのことが好きな気持ちが伝わってくる本でした。丁寧に調べられていて、現地にも行かれていて、読んでいて楽しめました。 フアナのことは、私も少しは知っていましたが、やはり1冊の本で読むと、時代背景や他国とのつながりもよくわかり、理解が深まります。 彼女は「狂っている」と言われていましたが、彼女の夫や父がその方が便利だから、「狂っている」と言って閉じ込めたのかな?という気にもなりました。読み終えたときには、私もフアナのファンになってしまいました。 ただ、私が気になった点は、伝記なのかエッセイなのか、境界があいまいだった点と、参考や引用文献が一切書かれていなかった点です。

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2011/03/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この本を読んでヒトコト。全く内容に関係ないですが。 一番の悲劇は、フアナが聡明で愛情深いという、良妻賢母にぴったりのタイプだったということじゃないかな、と思うのです。 カトリック両王が両親、ハプスブルク家最絶頂期の神聖ローマ皇帝が息子(しかも二人)、という状況の中、フアナは親たるスペインと伴侶たるドイツに心が引き裂かれちゃったんじゃないかな、と思いました。夫への嫉妬、というよりも。 著者のスペイン取材記も載っていて、心温まりました。 著者、フアナが大好きなのね…。 文体も平易(すぎ?)で分かりやすいです。 お気に入りの一冊。

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2013/02/11

[図書館] 読了:2010/8/30 2.5時間くらいで読めた。 著者略歴を見る限り西洋史専門ではなく、趣味が高じての出版、ということらしい。 スペイン語の著作も何冊かあたったらしく、熱意が全編に表れている。 文章は読みやすく、フアナを好きであることがよく伝わってくる。 ...

[図書館] 読了:2010/8/30 2.5時間くらいで読めた。 著者略歴を見る限り西洋史専門ではなく、趣味が高じての出版、ということらしい。 スペイン語の著作も何冊かあたったらしく、熱意が全編に表れている。 文章は読みやすく、フアナを好きであることがよく伝わってくる。 ただ、時折日本語のへんなところがある。 ・ですます体の中にいきなり「だと思う。」という文が紛れ込む(p.113)。 ・鋏で女官の金髪を切り落とすところに「グサリ」という擬音(p.122)。 ・「もう少し政治的駆け引きを持っていれば」(p.215) 編集者がこの本の完成度を高めるのにあまり関心がなかったのだろうか。。 フアナが好きなら読んでおいて損はないと思う。 幽閉中のフアナにはカール5世はじめフェリペ2世やその妃らが何度も訪れていた、というあとがきの話、本当だろうか。 本当だとしたら少しほっとする。

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