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逃げた以蔵 の商品レビュー

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2010/07/17

タイトルが示すとおり、名を「鉄蔵」と変え、無宿人として都を彷徨する以蔵が、自身の人斬り時代を懐古する形で話が進む。 人斬り以蔵も今はただの無宿人。その無宿人の心情からは、過去への後悔、痛切な生への希求が見出せる。 本作品は、謎の一年と呼ばれる時期に対し、一つの可能性を提示してみ...

タイトルが示すとおり、名を「鉄蔵」と変え、無宿人として都を彷徨する以蔵が、自身の人斬り時代を懐古する形で話が進む。 人斬り以蔵も今はただの無宿人。その無宿人の心情からは、過去への後悔、痛切な生への希求が見出せる。 本作品は、謎の一年と呼ばれる時期に対し、一つの可能性を提示してみせたといえるだろう。のみならず、いわば以蔵の空白の時期を利用し、時代、組織、人々に翻弄され続けた一人の人間の姿とその心理描写を巧みに描き出すことによって、彼が生きた時代や社会、転じて現代の中にも内在するであろう諸問題を読者に訴えかけているようにも感じられる。 これは他作品にも言えることであるが、単なる時代小説として消費するのではなく、以蔵の姿を通して色々考えてみてもよいだろう

Posted byブクログ