みかん作の経済性と農家の市場対応 の商品レビュー
本書は私の恩師によって書かれたものである。構成は下記のようになっている。 序章 本研究の分析視点 第1章 農家・産地の市場対応(その分類と本研究の課題) 第2章 産出規模拡大の経済性 第3章 追加的摘果労働投入の経済性 第4章 労働投入の作業間関係 第5章 SS(スピード・スプ...
本書は私の恩師によって書かれたものである。構成は下記のようになっている。 序章 本研究の分析視点 第1章 農家・産地の市場対応(その分類と本研究の課題) 第2章 産出規模拡大の経済性 第3章 追加的摘果労働投入の経済性 第4章 労働投入の作業間関係 第5章 SS(スピード・スプレーヤー)導入の経済性 第6章 販売先多様化の経済性 終章 本研究の要約と残された課題 本書の特徴は、市場価格低迷下における温州みかん農家の行動を、モデルを基にした計量分析的アプローチで評価している点にある。内容は高度 だが、分析から導き出される結果は理解しやすい。また分析結果を基にした考察は示唆的である。 市場価格低迷下に農家が取る方策として「規模を拡大する」「農産物の質を高めることで単価をあげる」「販売先の多様化を図る」というアプローチは現在でも議論されるところである。また一般にこれらは正しいこととして受け入れられているように思う。確かに「質を高め」「販売先の多様化」を図ることは収益性の改善に繋がりうると数量的に示されている。しかし、手作業を主とした労働使用的技術特性を持つ温州みかん作では「規模拡大効果」が期待できない。これらは、今後の日本農業を考える上で重要な事実であると考える。 近年、TPPなどの自由貿易協定が検討されるようになった。本書は1991年のオレンジ輸入自由化による温州みかんの市場価格低迷下における農家行動を評価したものである。2003年に書かれたものといっても、本書が示唆するところは現在の議論にも参考になる点が多いだろう。
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