東洋的近世 の商品レビュー
「東洋的近世」と題された論文のほか、五編の論考を収録しています。 著者は、西洋の歴史をもとにした時代区分を唯一の指標とする考えかたを批判し、西洋と東洋の歴史を比較し、両者に共通する地盤を見いだそうとしています。西洋では、ルネッサンスや宗教改革のあとに中央集権国家が成立し、中世か...
「東洋的近世」と題された論文のほか、五編の論考を収録しています。 著者は、西洋の歴史をもとにした時代区分を唯一の指標とする考えかたを批判し、西洋と東洋の歴史を比較し、両者に共通する地盤を見いだそうとしています。西洋では、ルネッサンスや宗教改革のあとに中央集権国家が成立し、中世から近世への移行が果たされます。その後、産業革命と市民革命によって、ヨーロッパはあらたな時代に突入したとみなすことができると著者はいい、その後のヨーロッパの歴史を「最近世」と呼んでいます。こうして、「近世」と「最近世」を区別することで、宋から清にいたるまでの中国の歴史を「東洋的近世」と理解することができると、著者は主張します。そして、このような見かたにそって、中国の近世史における政治・経済・文化の特色について解説がなされています。 著者の議論は、内藤湖南によって提唱された時代区分を継承しています。湖南は、貴族階級の没落を近世のメルクマールと考えましたが、本書は社会経済史の観点から湖南の時代区分の妥当性を裏づけする意義をもっているように思います。そのほか、東洋と西洋の絵画の特質のちがいについての議論など、興味深い論点にも触れられており、興味深く読みました。
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