卑弥呼の食卓 の商品レビュー
大阪府立弥生文化博物館館長、金関恕氏が監修する、縄紋から弥生時代にかけての日本の食と食文化についての歴史解説書。各界から専門家による寄稿、金関市との対談、シンポジウムなどの文書化したものも含まれる。 読者層(聴衆)を考古学好きな一般市民、と限定しているからだろうか、平明な語り口調...
大阪府立弥生文化博物館館長、金関恕氏が監修する、縄紋から弥生時代にかけての日本の食と食文化についての歴史解説書。各界から専門家による寄稿、金関市との対談、シンポジウムなどの文書化したものも含まれる。 読者層(聴衆)を考古学好きな一般市民、と限定しているからだろうか、平明な語り口調で大変読みやすい。 出版年は平成十一年だが、まだこの当時DNA鑑定が一般的でなかったようだ。金関氏と佐藤洋一郎氏(静岡大助教授(当時。現総合地球環境学研究所副所長))の対談においてDNAのしくみとはどのようなものか、という話から始まるところ(P185)など、ここ数年来のDNA鑑定の進歩を思い起こさせてくれる。 興味深いのは、トイレの遺構の調査で出土する寄生虫卵の種類によって、食生活が推測できるところである(P150)。 その排泄物のもとが一体何なのか、ブタ、栽培植物、海水魚、淡水魚、ウシ、ウマ、シカ…とかなり細かいところまで限定できるという。 糞石に含まれるステロール類を分析すれば、その落とし主の性別までわかるという(P18)。 こういう、食文化史に関する書物を読むと、ヒトの歴史はすなわち食の歴史でもあったのだと実感する。 何を、どのように獲得し、どのように保存し、あるいは調理し、食べたのか。 それは現代でも脈々と続いているのだ。
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