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天涯(第2) の商品レビュー

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2009/10/04

本書は沢木耕太郎による写真集である。彼は写真のプロではないし、「交換レンズもなければストロボも持っていない」(あとがき)。ゆえに写真集を出すなんておこがましいと自分でも言っているが、それが沢木耕太郎の旅の記録だというところから、写真が意味を持ちはじめる。良い紙を使いすぎて本全体が...

本書は沢木耕太郎による写真集である。彼は写真のプロではないし、「交換レンズもなければストロボも持っていない」(あとがき)。ゆえに写真集を出すなんておこがましいと自分でも言っているが、それが沢木耕太郎の旅の記録だというところから、写真が意味を持ちはじめる。良い紙を使いすぎて本全体が重いのが難点の単行本版。 「旅の価値をなすもの、それは恐怖だ。その証拠に、自国や自国の言葉からあまりにも遠くにいると、ふとした瞬間に、ぼくらは漠とした恐怖にとらわれ、本能的に本の習慣のなかに非難したくなる。それはまごうかたなき旅の収穫だ。そんなときには、ぼくらは熱っぽく、だが多孔質になる。どんなに小さな衝撃にも体の奥底まで揺すられてしまう。滝のような光に遭遇すると、そこに永遠が出現する。 それだから、楽しみのために旅をするなどといってはいけない。旅をすることに喜びなどありはしない。ぼくなら、むしろそこに、苦行を見出すだろう。永遠の感覚という僕らのもっとも内奥にある感覚を研ぎ澄ますことを教養というなら、旅をするのは自分の教養を広げるためだ。パスカルの気晴らしが彼を紙から遠ざけるのと同じように、喜びはぼくらを自分自身から遠ざける。一つのより大きな、より深甚な知恵としての旅は、ぼくらを自分自身に連れ戻してくれる。」 アルベール・カミュ『カミュの手帖』(大久保敏彦訳)

Posted byブクログ