四千万人を殺したインフルエンザ の商品レビュー
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1998年の香港から話は始まる。未知のウィルス、鳥インフルエンザの人間への感染、ヒトからヒトへの感染が広がった。そして、過去へ。 1918年のスペイン風邪は世界であっといまに広がり、約4000万人を殺したという。日本でも38万人が亡くなったという。 そしてその対策は・・「全米各地の市町村は、学校、映画館、劇場、教会、玉突き場、ダンスホールを閉鎖するように命じた。葬式に参列する人の数を制限した地域すらあった」 1998年の事態を受けて、「われわれはどういう対策がとれるのだろうか? 「基本的には、50年前にできた以上のことはできない」」 この本は、1999年発行。それから20年経っても基本的には100年前にできたことしかできない、ということをいま目の当たりにしている。
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某ブックオフで360円で売られているものを救助。前からスペイン風邪には興味があって、何か本一冊読んでみようと思っていたのでまさに僥倖。 1918年のスペイン風邪のことについて、その経過と、当時のウイルスを永久凍土に埋葬された遺体から発掘しようとしたプロジェクトのことが紹介されている。 このプロジェクトの話が興味深い。ってのも、ウィルスを手に入れるためには「永久凍土に埋葬された患者の遺体」が必要で、プロジェクトのリーダーはその候補地探しに5年を費やし、莫大な費用と多くの協力者を巻き込んで、いざ発掘してみたら、掘り始めてすぐに、その墓所は永久凍土になかったことが分かってしまうんですね。ここからの展開がまさにフェスティンガーいうところの「予言がはずれるとき」であって、リーダーはその明らかな”失敗”を前に、発掘は大成功だと強弁するわけです(もちろんプロジェクトは綿密な計画に沿って行われたもので”予言”で動いたわけではないですが。為念)。 訳書の出版は1999年。最後の1/5くらいはインフルエンザ治療薬(具体的にはリレンザ)開発の話が触れられているのだけど、この時点ではまだ市販されてない。それで「プラグ・ドラッグ」なんて表現が使われていて、あー、今は「タミフル」「リレンザ」で通用するなーとか。ここで気になったのは、リレンザなどは感染初期に使わないと意味がないが、初期のフル―を検出できるキットがないので云々とあったこと。自分のここ数年の感覚では、明らかに周りの状況&自身の体調からフルーが疑われても、ある程度、症状が進行(具体的には熱が38度を上回るくらい=個人の主観ですよ。為念)になってからでないと陽性反応が出なくて処方してもらえないって感じがあって、初期での投薬されてないじゃんーと。でも本書執筆のあと15年もあるので、その間にリレンザ等の効果について異なった知見が積み重ねられたのかもしれん。 スペイン風邪については、流行当時の様子をもう少し詳しく知りたい気持ちもあり、巻末に紹介されていた生存者たちへのインタビュー集というのに手を出すべきかどうか、検討中。 本全体の印象としては、個々のエピソードは面白いが、構成やらなんやらが甘く、まとまりのない印象。ネタがいいのに活かしきれていないが、ネタが良いので読めてしまうって感じ。どっかの料理みたい。
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