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転換期の文学 の商品レビュー

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2019/07/23

「革命と動乱の時代」「文学における産業化と都市生活」「モデルネの軋轢」「政治の限界と表現の可能性」という4つのテーマに沿って、15人の執筆者による論文が集められています。 このほか、編集を担当しているニーチェ研究者の三島憲一は、本書の序章にあたる「はじめに―〈近代文学〉について...

「革命と動乱の時代」「文学における産業化と都市生活」「モデルネの軋轢」「政治の限界と表現の可能性」という4つのテーマに沿って、15人の執筆者による論文が集められています。 このほか、編集を担当しているニーチェ研究者の三島憲一は、本書の序章にあたる「はじめに―〈近代文学〉についての語りの陰影」という論文を執筆しています。ここでは、西洋の「近代文学」という発想の枠組みが、一定の政治的な意味を担っていることについての指摘がなされています。 木村直司の論文「フランス革命とドイツ文学」は、近代のドイツの文学者たちがフランス革命をどのように受け取ったのかということを論じており、まさに「近代文学」の政治性が浮き彫りにされています。同様に、木下康光の論文「神・言語・民族―ヤーコプ・グリムの仕事と思想の再検討」も、こうしたテーマにおける典型的な事例にかんする研究です。 鵜飼哲の論文「コロニアリズムとモダニティ」は、竹内好美の魯迅研究をとりあげて、ポストコロニアル的な観点から植民地における文学の政治性にかんする鋭い指摘がなされています。これに対して大橋良介の論文「アジアの現代文芸―「アジアの近代化」か「近代のアジア化」か」は、財団法人大同生命国際文化基金によって現在もなお継続的に刊行されている「アジアの現代文芸」シリーズのなかから、著者の目を引いた作品を紹介しているものですが、そのサブタイトルである「「アジアの近代化」か「近代のアジア化」か」というテーマに、「西洋」と「東洋」をめぐる近代日本的なまなざしの政治性が顔をのぞかせているようにも感じられます。

Posted byブクログ